――日本でもここが進まないと、ブロックチェーンどころではないわけですね。
レベルアップは段階的なものだと思う。ブロックチェーンが真価を発揮するのは、複数の企業間、産業間をまたぐやり取りだ。ただ正直、日本のデジタル化はもっと手前。まずはSaaSなどのソフトウェアを導入する。紙・ハンコを電子的なものに置き換える。これが目の前の課題で、「レベル1」。
「レベル2」は、そういうサービスを使って業務を構築していくこと。稟議のフローなどは、アナログベースのプロセスをそのまま踏襲するのではなく、デジタルに合った形に最適化していく必要がある。「レベル3」はそれを完全に自動化していくこと。機械学習プログラムや銀行APIみたいな仕組みを入れ、条件がそろった時点でお金すらも自動で流れるようにする。言い換えればオートメーション化だ。
そして「レベル4」が最初に挙げた企業間、産業間のコラボレーションを進めること。日本はまだ「レベル1」をクリアしようというところなので、その段階でブロックチェーンを当てはめに行くのは無理がある。ただし、「レベル1」のころから「レベル4」を意識しなければ、「RPA(単純作業の機械化)を導入して終わり」みたいな矮小な話になってしまう。「レベル4」のブロックチェーンを祖業とする僕らがDX事業に取り組む意味もそこにある。
「お金の流れ」「価値の流れ」に的を絞る
――それで最近は弁護士ドットコム(クラウド契約サービス「クラウドサイン」を提供)、マネーフォワード(クラウド会計などのバックオフィス向けサービス「マネーフォワード クラウド」を提供)など、SaaSプレーヤーとの業務提携を次々進めていると。
パートナーはいずれも「お金の流れ」「価値の流れ」のデジタル化に関わる企業だ。DXというとリモートワークから何から、範囲は広い。そこで僕らはある程度、「お金の流れ」「価値の流れ」に的を絞る。いろいろな規制が関わってくる領域なので、知見が必要になる。ブロックチェーンの実証実験を通じ顧客の課題を見てきた蓄積が生きるだろう。
折しも、4月には三井物産と次世代アセットマネジメントの合弁を立ち上げた。アセットマネジメントの業務フローは、稟議や送金指示など、投資家、外部事業者とのやり取りが非常に多い。かつそれらプロセスのほとんどが人為的に動いていて、膨大な紙とハンコが介在する。ここをデジタルで動かせれば、今までよりいろいろな資産を証券化、流動化できる。
三井物産では不動産、インフラといったオルタナティブ資産を対象にした、多数のアセットマネジメント事業を展開している。実際にアセットを所有する彼らに対し、レイヤーエックスは、いわば「デジタル証券変換器」を作るノウハウを持っている。アセットマネジメントはセキュリティ面など、規制もトップクラスに厳しいところ。ここでベストプラクティスを作れれば、おのずとほかの案件につながってくると思う。
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