「美白クリーム」がインドから消えつつある理由 化粧品会社が直面した「白人こそ最高」問題

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こうした動きはユニリーバだけではない。

アメリカ企業ジョンソン&ジョンソンはその前週末、アジアや中東で販売する美白乳液'Fine fairness'(「素敵な美白」か)や美白クリーム'Clean and clear fairness'(「美しく透き通った美白」)シリーズの販売を取りやめると発表していた。

また、世界最大の化粧品メーカー、ロレアルも商品名からwhite、fair、lightなどの言葉を削除する方針を打ち出している。

これに対して、言葉の修正だけでは不十分で、インドや中東で美白クリームの販売そのものを中止するべきという意見もある。インドで「美白」批判を主導してきた活動家の1人、シャンダナ・ビラン氏は英BBCの取材に対して、商品名の改称が包括性への重要な一歩と評価する一方、「彼らがそれを何と呼ぼうと、実質的に美白クリームであることは変わりない」と述べ、化粧品メーカーにさらなる見直しを求めている。

頭の中の植民地支配

こうした出来事を過剰反応と思う人もあるかもしれない。しかし、インドに限らず、肌の色は「見えない支配関係」の象徴とみなされてきた。

カリブ出身の黒人で、後にアルジェリア独立戦争に身を投じた精神科医で哲学者のフランツ・ファノン(1925-1961)は、各地での臨床調査を踏まえて、当時の植民地支配が有色人種とりわけ黒人を単に政治・経済的だけでなく、精神的にも支配するものであることを暴いた。

1952年に著された『黒い皮膚・白い仮面』には、黒人でありながら白人のような思考パターンをすり込まれた結果、自分の黒い肌への拒絶反応に苦しむケースが数多く記されている。

フランスにきている黒人の女子学生で、自分は黒人の男とは結婚できないと無邪気に……告白する多くの者を、私は知っている。……それは黒人の価値を全く認めないからではなく、白人である方がずっといいからなのだ、と。
(出典:『黒い皮膚・白い仮面』p70 翻訳版の日本語を一部変更)

念のために確認すれば、これらの女子学生も黒人だ。それにもかかわらず白人の眼で自分を見て、黒人であることを過小評価し、白人世界の一員でありたいと願う喪失感に、精神科医であるファノンは恐怖症の患者に近い強迫的な性格を見出している。

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