一見好調なアメリカ株が抱える「3つの懸念」 「今後も上昇継続」というシナリオでいいのか

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一方、アメリカ株のネガティブな材料としてまず挙げられるのは、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が6月中旬から再び増えている点だ。ニューヨーク州などで爆発的な感染拡大が起きた4月上旬の水準を超え、6月後半からからアメリカ全体の新規感染者は増え続けている。

人口対比の感染者で見ると、アリゾナ、フロリダ、サウスカロライナ、ネバダ、テキサスなど南西部州での感染者増加が顕著だ。中でもアリゾナ州は、3、4月のニューヨーク州などに近い爆発的な感染者拡大が見られている。

感染者拡大は、検査体制が整ったため起きている側面もあると見られるが、上記の州では入院者数が増え、また陽性率も総じて高い。公衆衛生政策が不徹底な中で経済活動再開が感染拡大をもたらし、これらの州では経済活動への制限を再び強める対応を余儀なくされている。

経済活動再開の状況をいち早く把握できる米Google社による移動指数では、政府が定めた経済再開の基準をクリアしていない州において、地方政府の制限措置あるいは活動自粛から、6月半ばから移動指数が再び低下している。アメリカ全体で見ても、移動指数は6月半ばからほぼ横ばいとなり、経済活動復調が早くも足踏みしつつある。

不透明さ増す追加財政政策の行方

2つ目のネガティブな要因は、今後のアメリカ経済状況を左右すると見られる追加の財政政策の行方である。同国では、他の先進国を上回る規模とスピードで、家計所得を補償する大規模な政策対応が実現している。だが、秋口までに失業保険給付の上乗せ、そして企業への融資を通じた雇用補償政策の効果が剥落するとみられる。

これらに代わる追加的な財政政策に関して、共和党と民主党が合意できるかは依然不明で、6月下旬以降目立った進捗はない。

共和党の議員は失業保険給付上乗せには反対が多く、またドナルド・トランプ米大統領は第2弾の現金給付政策を考えている模様だ。だが、経済活動が戻りつつある中で大規模な現金給付政策に共和党の議員が賛同するか不透明である。これらの2つの要因は、これまで経済指標の改善によって盛り上がっていた金融市場におけるV字回復期待を今後低下させると予想される。

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