JXが中核事業会社3社の社長を総入れ替え 業績悪化の歯止めに向けて人心を一新

拡大
縮小

特に悪化が顕著なのが、JX日鉱日石エネルギーが担当するエネルギー事業で、その中心である石油精製販売部門は2013年度に500億円近い赤字に転落したと見られる。ガソリンや灯油など石油製品の販売マージンの縮小傾向が続いているためだ。JXは業界最大手でプライスリーダー的存在とはいえ、石油製品に対する構造的な需要減少と業界の過剰設備体制の下で、価格競争の影響が直撃している。

また、人事発表の翌日の22日、金属事業での損失計上も明らかにしている。南米チリにおける銅鉱床開発プロジェクトの減損処理などにより、2013年度通期純利益を従来予測の1500億円から1050億円へ下方修正すると発表したのだ。中国における銅相場の暴落が直撃したもので、まさに石油販売マージン縮小とのダブルパンチといえる。

人事案を練った持株会社の首脳

JX日鉱日石エネルギーの新社長となる杉森氏は今後の経営課題について、「現在の中期計画が始まって1年経過したが、大幅未達の可能性があり、残り2年で何が何でも達成したい」と言う。

同社はエネルギー高度化法への対応として、3月末で新たに室蘭製油所の運転を停止(石油化学工場へ転換予定)。業界内では出光興産も3月末に徳山製油所を停止しており、2014年度は石油製品の需給が引き締まりに転じる可能性は高い。とはいえ、消費増税も相まってガソリン価格の上昇が需要を押し下げる懸念も強く、先行きは楽観視できない。販売マージン確保のため、杉森氏は「輸出入や設備稼働を通じた需給の適正化策をより機動的に行っていく」としている。

課題は、ほかにもある。「総合エネルギー企業」を標ぼうするJXグループとして、2016年度から予定される電力・ガスの小売り自由化への対応や、再生可能エネルギーの拡大、さらには海外事業、新規事業の開拓も大きな課題だ。市場拡大や効率化追求のため、東京電力など異業種との大規模提携も積極的に検討していく必要がある。

今回の人事は木村会長と松下社長が昨年末ごろから案を練ってきたという。グループを主導する両氏としては、業績悪化と経営環境激変という圧力を受け、何らかの手を打つ必要性に迫られていた。持株会社傘下子会社のトップ交代が、狙い通りに人心一新と組織活性化に結び付くか、業績の改善という形で明確に示していくことが問われる。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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