香港・国家安全維持法、条文で読む深刻事態

「一国二制度」と「人権」は完全に消え去った

すでに知られているように、国家安全維持法によって新たに国家安全維持委員会と国家安全維持公署の2つの組織が作られる。

まず委員会だが、香港行政長官がトップとなり、香港行政府の幹部がメンバーとなるが、決して自律的な組織ではない。この委員会には秘書処が設置され、そのトップである秘書長は中央政府が任命し「委員会を指導する」とされている(第13条)。それだけではなく中央政府が指名・派遣する国家安全事務顧問が会議に出席し、アドバイスを行う(第15条)。委員会は中央政府の「監督及び問責を受ける」とも定められている(第12条)。つまり、完全に北京の支配下に置かれているのである。

市民から姿が見えない秘密組織

この委員会の役割として、「国家安全に係るインテリジェンス・情報の収集分析」「国家安全に危害を加える犯罪案件の調査」など6項目が挙げられている。後述する国家安全維持公署などが民主化運動を抑え込む実働部隊だとすれば、委員会はその上部機関のようなものかもしれない。

しかもこの委員会は「香港特別行政区のその他の機構、組織及び個人の干渉を受けず、業務情報は公開しない。香港特別行政区国家安全維持委員会が行う決定は司法の点検を受けない」(第14条)とされており、市民からは何をしているのかまったく見えない秘密組織となる。

もう1つの国家安全維持公署は「人員は中央人民政府国家安全擁護の関連機関が合同で派遣」(48条)され、「経費は中央財政により保障」される(第51条)とあり、こちらは完全な政府機関である。そして、「中国人民解放軍駐香港部隊の工作連絡と工作協力を強化しなければならない」(第52条)と書かれており、人民解放軍と連携している。

その職務は「情勢を分析・検討・判断し、国家安全維持の重大戦略及び重大政策について意見と提案を提出」「香港特別行政区が国家安全維持の職責を履行することを監督、指導、協調、支持」「インテリジェンス・情報を収集分析」「犯罪事件を扱う」(第49条)などで、言うまでもなく香港での反政府活動などを取り締まるための秘密警察組織である。

このことはすでに公表された副署長2人の出身がいずれも中央の治安維持部門出身者であることからも裏付けられている。300人規模の組織とされており、今後は北京から派遣されたプロ集団が、水面下で活動を展開することになる。

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