通勤の主役になり損ねた「2階建て電車」の弱点 グリーン車は成功したが普通車は普及せず
だが、JRはこの車両での経験をもとに、通勤ライナー列車に使うための車両としてオール2階建て電車「215系」を1992年に導入した。10両編成のうち8両が普通車、2両がグリーン車で、着席可能な人数は1010人にのぼる。
この車両は登場以来、通勤ライナーである「湘南ライナー」に使用される以外に、日中の東海道本線快速「アクティー」や、休日は山梨方面への「ホリデー快速」にも使用された。多くの人が座れるというこの車両は人気が高く、利用者が集中した。2階席からの眺望も評価された。
だが、15両編成の多い東海道本線で10両編成のこの車両がやってくると、先頭や最後尾の車両では混雑が起こりやすくなる。しかも、215系の場合、両側の先頭車は1階部分が機器室になっており座席がない。また、この車両もドアが片側2カ所であるため、乗降に時間がかかる傾向があった。
215系は今も現役だが、その後は通勤ライナーのための車両は造られておらず、さらに言えばJR在来線の普通・快速では、特別料金や指定券のいらない2階建て車両も登場していない。
2階建て通勤電車はやっぱり難しい?
これまでの経緯を見ると、通勤電車の2階建てはグリーン車でしか成功していないといえる。そのグリーン車でも、ピーク時には全員が座れないこともある。普通車の場合はさらに利用者が多く、頻繁に乗客が乗り降りするため、2階建てだと乗降に時間がかかってしまう。どうしてもロングシート・立席中心、さらにドア数が多いという構造でないと、人の流れをスムーズにすることは難しい。
海外では2階建ての通勤車両も珍しくないが、そういった国の場合は座れることが前提となっており、東京圏ほどの混雑が見られないために成り立っていると言える。また、車両のサイズ自体が日本より大きいことも多く、日本と同等に語るのは難しいだろう。
首都圏で見られる普通列車の2階建てグリーン車は通勤電車の一形態であり、その意味では2階建ての通勤電車もある程度実現しているともいえる。だが、特別な料金なしで利用でき、多くの人が座れる「理想の2階建て通勤電車」は、少なくとも都市部では今のところ困難なようだ。
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