通勤の主役になり損ねた「2階建て電車」の弱点 グリーン車は成功したが普通車は普及せず

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211系のグリーン車で比較すると、平屋の車両は座席が64席だったのに対し、2階建て車は90席。グリーン車は編成に2両連結しているので2階建てだと180席になり、平屋の場合より50席以上も座席数が増えるのだ。平屋の車両3両分に近い座席数を2両で確保できることになる。

当時はピークを過ぎたとはいえ、まだバブル経済華やかなりし頃だ。それまで富裕層向けのイメージが強かったグリーン車を利用する人も増え、通勤時間帯には着席できないという状況があった。そんな中で登場した2階建てのグリーン車は、座れるチャンスが増えるだけでなく、眺望を楽しめる「2階建て」という構造そのものも人気を呼んだ。

2階建てグリーン車はその後登場した横須賀線・総武本線のE217系(1994年登場)や東海道線・宇都宮線・高崎線などのE231 系・E233系にも受け継がれたほか、常磐線も2007年春から2階建てグリーン車の連結を開始。2023年度末に営業開始予定の中央線グリーン車も2階建て車になることが決まっている。東京圏の通勤電車も、グリーン車についていえば2階建てが当たり前という状況だ。

普通車でも2階建ての試みが

一方、普通車でも2階建て車両を導入する試みもあった。2階建てグリーン車が登場した直後の1991年、常磐線向けに1両だけ普通車の2階建て先頭車両「クハ415-1901」が作られた。当時の常磐線の主力、415系電車に連結するために造られた車両だ。

ドアは片側2カ所ながら、構造はグリーン車と異なり一般的な通勤電車に近い両開きで、ドア付近の室内はロングシートとクロスシートを組み合わせた構造。1階は2人がけボックスシート、2階は2人がけと3人がけのボックスシートが並んだ。定員は156人で、うち116人が着席可能だった。一般的な平屋の415系先頭車は座席定員が50人強のため、座れる人数は倍近いことになる。

多くの人に座ってもらえるのはいいことである。しかし、常磐線の当時の主力車両は3ドア車であったのに対し、この車両は2ドアだ。欠点として、乗降に時間がかかることが問題になった。それゆえ、使われるのはラッシュから外れた時間帯の列車となり、着席サービスは提供したものの、肝心のラッシュには効果を発揮できない結果となった。

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