手越祐也「話すほど自我が見えた」会見の違和感 「会見に向かない人」と思わせるフレーズを連発

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手越さんは会見を締めくくるスピーチを「ちょっと短時間ではあったので、きっと皆さんの中にも、YouTubeをご覧の皆さんの中にも、『あれ聞きたい』『これ聞きたい』ということもあったと思うんですけど」と切り出しました。約2時間にわたる長時間の会見で、記者も見ている人々も疲れているのに、「僕に聞きたいことはもっとあるはずなのに、短くて申し訳ない」というスタンスだったのです。

あらためて会見を振り返ると、手越さんはスタートから質疑応答に入るまでの約33分間にわたって1人で話し続けたあとに、「これでよろしいでしょうか」と言って満面の笑みを浮かべました。まるで「僕の言いたいことと、皆さんの聞きたいことをひと通り話したつもりですが、どうでしたか?」と自画自賛し、同意をうながしているように見えたのです。

賢明なビジネスパーソンの皆さんなら、長い間一方的に話し続けた人が「これでよろしいでしょうか」と笑みを浮かべることの奇妙さがわかるでしょう。やはり手越さんは良くも悪くも自分のことしか見えておらず、記者や見ている人のことは考えられていなかったのです。

先輩・中居正広との決定的な違い

その意味で、今年2月21日に退所会見を開いたジャニーズ事務所の先輩・中居正広さんとの差は歴然。会見開始前から自ら会場に入って記者たちをなごませ、一方的に話すのではなく、笑いを交えて会話のキャッチボールをする中居さんの振る舞いは人々の感動を誘いました。

会見でどう振る舞い、人生をどう生きるかは、個人の自由ではあります。とはいえ、手越さんが本気で成功を勝ち取りたいのなら、身近な先輩を参考にするくらいの柔軟性を持ったほうがいいのではないでしょうか。

増殖したワイドショーで繰り返し放送され、ネット上にも動画が残り続ける今、「手越さんのような自意識、自負、自尊心、自我の強い人は会見に向いていないし、去り際に多くを語るべきではない」と思わされました。「絶対結果を出すので見ていてほしい」と言い切れること自体はすばらしく、今後めざましい活躍を見せてくれる可能性もあるでしょう。

しかし、今回の会見に限っては、残念ながらまだまだ3密を避けるべき状況であるにもかかわらず、わざわざ記者を集めて開いた意味はあまりなかったように感じてしまったのです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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