クチコミサイトYelp、10年目の挑戦 急成長中のサービスがついに日本にも上陸

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モバイルに伸びしろ

イェルプの収入の約8割はローカルビジネスからの広告。売り上げは着実に伸びており、13年12月期は2.3億ドルと前期比で約7割拡大。今期は3.5億ドルの見通しだ。一方、利益については、「出そうと思えばいつでも出せるが、今は事業を拡大するのに積極的な投資をしたい」(ストッペルマンCEO)ため、赤字が続いている。

米国だけで1500万~2000万のローカルビジネスがあるとされ、イェルプの広告主は6万7000程度。広告収入の伸びる余地は大きい。特に期待されるのがモバイル広告だ。同社は07年にアイフォーンが発売された当初から専用アプリを展開しており、現段階では全訪問者の3割がモバイル経由でイェルプを使っている。

急ピッチで事業を拡大しているが、課題もある。

一つは競合の問題。目下、ローカル広告ではグーグルと正面から対峙している。グーグルは検索結果にローカル広告を表示しているだけでなく、近年はSNSの「グーグルプラス」を通じてクチコミサービスにも参入している。今後、広告主の争奪戦が一段と熾烈になるのは間違いない。ちなみにグーグルは09年、イェルプに買収を持ちかけたことがある。

敵はグーグルだけではない。フェイスブックのように膨大なユーザーを持つ企業が今後、ローカル広告に参入してくる可能性もある。

もう一つの課題は掲載情報の信頼性をいかに保つか、だ。米国では、評価される側が金銭を払って高い評価のクチコミをユーザーから「買う」事例が増えている。イェルプでは独自のアルゴリズムを使って、「信頼性の低いクチコミ」として表示するようにしている。数年前からはすべての投稿を人の目で監視し、クチコミの売買が疑われる場合は、店名やその証拠を公開し、ユーザーに警告している。

それでも米国では、イェルプで厳しい評価を受けた事業主が、名誉毀損などで訴訟を起こすケースが複数発生。広告主に対しての評価が甘いとの指摘も出ている。ストッペルマンCEOは、「イェルプが成長し、成功すればするほど、悪い評判が出てくるのは仕方ない」と話すが、一度信頼を失えば、取り戻すのは容易ではない。

では、日本のライバルはどう見ているのか。「食べログ」の運営を担当するカカクコムの村上敦浩氏は、「(食べログのように)専門的なサイトにクチコミを書く人同士のほうが、目的が共通しているため、コミュニティを形成しやすい」と話す。また5つの星を使って行う評価方法が食べログとは異なるという。「(イェルプの計算は)単純平均で、ランキングの信頼性には欠ける」と辛辣だ。

まずは影響力を持ったクチコミの発信者をどれだけ取り込めるかが、スタートダッシュのカギを握りそうだ。

(撮影:今井康一、 週刊東洋経済2014年4月26日号〈21日発売〉核心リポート01)

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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