学生時代年金未払いの人はどうすればいいのか 未納期間の不足分を「後払い」するのは可能?
学生であっても20歳になったら第1号被保険者として国民年金に加入義務があり、保険料の納付義務があります。ただし、収入が少なくて納付できない場合は、納付の猶予を受けることができます(学生納付特例制度)。また、猶予を受けると、後から10年以内に納めることができます(追納制度)。
しかし、かつて20歳以上の一定の学生は国民年金に加入義務がありませんでした。具体的には、昼間部の大学、大学院、短大、高等専門学校、専修学校・各種学校等の学生は、1991年3月以前(専修学校・各種学校の学生は1986年4月~1991年3月に限定)については加入が任意でした。
現在、50歳以上の人でこれらの学生期間のあった人も多いと考えられますが、任意であるために加入しておらず、その分の老齢基礎年金が少なくなる人も出てくることになります。
大学2年生の4月に20歳になり、大学を4年で卒業した場合、大学生期間のうちの20歳以降の期間は3年間(36カ月)。この36カ月について未加入のまま、大学卒業後の翌月(4月)から会社員となって厚生年金に加入し、60歳の前月まで37年間(444カ月)厚生年金保険料を負担すると、老齢基礎年金の保険料納付済期間も444カ月になります。その結果、老齢基礎年金は72万3073円になり、満額78万1700円より5万8627円少なくなります。
厚生年金を継続すると「経過的加算額」が積み上がる
遠い学生時代の未納が響いて減らされる年金を、何とか満額まで増やす方法はないか気になるところですが、60歳以降でも増やすことが可能です。
60歳以降も引き続き、会社に勤務する人も多いことでしょう。会社員等の場合、厚生年金は最大70歳になるまで加入できます。60歳以降、厚生年金に加入して、厚生年金保険料が給与・賞与から控除され続けても、20歳以上60歳未満の場合と異なり、老齢基礎年金は増えません。しかし、老齢厚生年金の経過的加算額が増えることになります。
経過的加算額は、次の①から②を差し引いて計算します(2020年度)。
60歳以降も厚生年金に加入すれば、①が増えます。一方、②にある厚生年金加入期間は20歳以上60歳未満の期間なので増えないものの、①から②を差し引いた経過的加算額が増えますから、年金は60歳以降1カ月加入するごとに、年額1630円ずつ増える計算となります。
①の厚生年金加入の合計月数の上限が480なので、厚生年金加入が480カ月に達するまで経過的加算額を増やせます。60歳時点で444カ月の人の場合、63歳まで3年間(36カ月)加入して5万8680円(1630円×36カ月)増やすことができます。先述の老齢基礎年金で足りていない5万8627円を上回る額になります。
厚生年金加入によって増える年金額は、20歳以上60歳未満の加入の場合が報酬比例部分(老齢厚生年金)と老齢基礎年金、20歳前や60歳以降の場合が報酬比例部分と経過的加算額(いずれも老齢厚生年金)となります。
大学卒業まで年金に未加入、卒業後はずっと会社員だった人の場合、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」は、50歳代時点では、この経過的加算部分について数百円など少額で表示しています。しかし、60歳以降厚生年金加入で、報酬比例部分だけでなく、この経過的加算額も増えることになり、足りない老齢基礎年金の分を補うことができるのです。
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