「NHKの黒人の描き方」がまるで話にならない訳 「人種描写がステレオタイプ」以前の問題

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今回のように罪のない黒人が殺害される事件は、過去にも数多くあった。1992年のL.A.暴動の発端となったロドニー・キング事件もそのひとつ。当時、キング氏に暴力をふるった警官は無罪となっている。映画『フルートベール駅で』でも描かれた、2008年大晦日から新年にかけての夜、オークランドでオスカー・グラント氏が殺された事件でも同様だ。

殺害まではいかなくとも無実の黒人が根拠なく容疑をかけられることはしょっちゅうある。そのせいで黒人の多くはたとえ何も悪いことをしていなくても、警察による暴力を恐れている。

つまり、今回の暴動は、フロイド氏の件だけについて起こったものではない。警察が持つ人種偏見と、黒人の命を尊重しない態度について、「もうたくさん!堪忍袋の尾が切れた!」という思いによって起きたのである。

だから、この動画の中に「警察の暴力」という言葉が出てこないのは、NHKが事件のことをまったく把握していない証拠だ。

立て続けに起きる「黒人差別」

フロイド氏の事件の直前、ほかの人種差別事件がふたつ起こったことにも触れておきたい。ひとつは、ジョージア州でジョギング中の黒人男性アマド・オーブリー氏が射殺された事件。これは2月に起きた事件だが、先月になって、白人によるヘイトクライムだったことがわかっている。

ふたつめは、ニューヨークのセントラルパークで、犬の散歩をしていた白人女性に黒人男性が「ルールどおりに犬は鎖に繋いでください」と注意したところ、白人女性が警察に電話をしたという事件。この一部始終はビデオ録画されており、白人女性は世間から大バッシングを受けたうえ、仕事もクビになった。

だから、このデモは、何をおいてもまず「黒人差別」についてのものなのだ。昔からある差別は、収入面や教育面、健康保険などの面でも格差を生み出し、それが新型コロナの感染率や失業率にもつながっている。

コロナや失業に対する不安も一緒に吹き出したというのは、もちろん正しい。これについて深く語るのであれば、もちろん差別についても語られるべきで、改革はそこからなされないといけない。しかし、1分20秒ではそこまではとてもたどりつけない。

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