ROE・効率性重視では製造業が生き残れない理由

不確実性とダイナミック・ケイパビリティ  

われわれは、すでに「不確実性」に満ちた世界に生きている。しかも、近年、「不確実性」は著しく高まりつつある。今回のパンデミックは、そういう「不確実性」の1つにすぎないのだ。IMF(国際通貨基金)のクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事も、「不確実性が、ニュー・ノーマルになりつつある」と述べている(「世界経済のために強固な足場を見つける」IMF Blog 2020年2月20日)。まさに、そういう時代認識が求められている。

繰り返しになるが、問題の本質は、コロナウイルス感染症ではなく、「不確実性」にある。不確実性の高い世界を前提として、戦略を組み立てなければならないのである。

しかし、不確実性の高い世界では、将来予測がほぼ不可能であるがゆえに、有効な戦略を立案することは著しく困難なものとなろう。

例えば、製造業は、ある程度、将来を予測したうえで、技術開発や設備投資に踏み切るものである。しかし、将来が予測不能だということになると、リスクを負って巨額の投資を行うことは、およそ不可能になる。技術開発も設備投資もできないのでは、製造業は成り立ちえない。不確実性とは、製造業にとって最大の敵であると言っても過言ではない。

では、将来が予測困難な不確実性の高い世界において、製造業には、どのような経営戦略がありうるのであろうか。

最も有効な生存戦略とは

そこで『2020年版ものづくり白書』が着目したのは、現在、最も影響力のある経営学者の1人であるデイヴィッド・ティース教授(カリフォルニア大学バークレー校)が提唱する「ダイナミック・ケイパビリティ」論である。

「ダイナミック・ケイパビリティ」とは、環境や状況が激しく変化する中で、企業がその変化に対応して自己を変革する能力のことを指す。

ティースによると、企業の能力は、「オーディナリー・ケイパビリティ(通常能力)」と「ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)」の2つに分けられる。

「オーディナリー・ケイパビリティ」とは、与えられた経営資源をより効率的に利用して、利益を最大化しようとする能力のことである。それは、労働生産性や在庫回転率、あるいはROE(自己資本利益率)のような数値によって測定することができる。

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