アシアナはどこへ、吹き荒れる韓国航空大再編 買収断念なら大韓航空「一強体制」の可能性

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韓国の公正取引法による規制もある。持株会社体制にあるHDCがアシアナ航空を買収すれば、アシアナ航空はHDCの孫会社となり、エアプサンはひ孫会社となる。公正取引法に従えば、アシアナ航空はエアプサンの発行済み株式の100%を買い入れないといけないが、そこまでHDCが抱え込むことができるかは疑問だ。現在、アシアナ航空が保有するエアプサンの保有率は44.17%だ。

エアプサンが放出されるとなれば、大韓航空が買収する可能性もある。現在、イースター航空買収を進めているチェジュ(済州)航空がエアプサンを買い入れる可能性は低い。もちろん、航空業界以外からエアプサン買収に名乗り出る企業があるかもしれないが、買収後のシナジー効果などを考えると、既存の航空会社が買収する可能性が高いだろう。

アシアナ買収不発なら業界再編へ

HDCがアシアナ航空の買収を断念すれば、航空業界の再編も急スピードで進むだろう。KDB産業銀行が現状のままでアシアナ航空の売却を進めるのは難しいだろう。新型コロナで航空業界の厳しさが増している中、アシアナ航空の新たな買い手を探すのは至難の業だ。航空業界周辺では、「KDB産業銀行がアシアナ航空の売却に失敗すれば、アシアナ航空の合理化やリストラを進めざるをえなくなるだろう」との声が多い。

KDB産業銀行がアシアナ航空のリストラを進めた後にエアプサンを分離・売却し、同じアシアナ航空子会社のエアソウルの清算手続きに入るという見方もある。航空業界関係者は、「アシアナ航空の財務状態と航空業界の危機的状況を考えると、KDB産業銀行によるアシアナ航空売却はとても難しい。KDB産業銀行からすれば、アシアナ航空の企業価値を引き上げるために大規模なリストラに着手するほかない。この過程で、競争力が激しく下落しているエアソウルは清算手続きを進める可能性がある」という。

エアソウルの2019年末時点の資本総額は57億ウォン(約5億円)のマイナスであり、債務超過状態だ。

HDCがアシアナ航空を買収しなければ、韓国航空業界は大韓航空とアシアナ航空の二強体制から大韓航空の一強体制へ変わる可能性が高い。大韓航空が分離売却されるエアプサンも買収すれば、ジンエアー、エアプサンを合わせた「LCC連合」を保有する企業集団になる。現在、大韓航空が長距離路線で圧倒的競争力を確保しており、一強体制となれば、中短距離をはじめ、あらゆる目的地への需要を満たす航空会社が生まれる可能性が出てくる。

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