低所得者を食いものにする「極限の資本主義」 「VIP待遇」にハマる人が知らない企業の手法
慢性的なストレスや不安心理は本来、対人関係の中で解消されるべきものだ。
しかし消費財のデザイナーや供給業者は、一時的な対処法として、神経学的な報酬系に的を絞り、私たちを物との関係に誘導する巧みな手法を開発してきた。多くの学者や評論家が関心を寄せたのは、その点だった。
私たちは食料、セックス、安らぎが絶対的に不足し、それらを追い求める中で生き残れるように進化してきた。
しかし食料、セックス、安らぎが有り余る状況でいかに抑制を効かせるかについて、私たちはまったく不得手である。現代世界において大きな弱点を抱え込むことになってしまった。
心理学者のオリバー・ジェームズは、著書『Affluenza』でデンマークの新聞編集者の発言を引用している。
多国籍企業は、デンマークにはぜいたく品の市場が存在しないことを知っている。新製品は数年たってもまったく浸透しない。値段が高いうえに、デンマーク人は目立つことが嫌いだからだ。新製品を求めたがるのは、風変わりなプレイボーイだけだ。しかし値段が下がって中産階級の人々にも手が出せるようになると、18カ月以内に普及率は70%に達する。
ジェームズによれば、ぜいたく品の消費はデンマーク人にとってステータスの源泉になりえない。男女間の平等だけでなく、国民全体の所得の平準化が進む中で、デンマーク人は広告の影響を受けにくく、派手な車やそれ以外の高級品にもあまり関心を示さない。これは本当だろうか。平等化の進んだ社会では、広告主は実際に努力のかいがないのだろうか。
お金で幸せは買えないが…止めようとしない
それは間違いないようだ。国内総生産(GDP)に対する広告支出の比率と、所得格差の指標との関係を見ると、不平等の度合いが高まるにつれて広告支出が増えているのがわかる。
企業が私たちの願望や不安につけ入ろうとしていることは周知の事実だ。彼らの約束がいかに空疎であるかを明らかにした研究も数多く存在する。私たちは「お金で幸せは買えない」という古いことわざを繰り返し使っているが、それでも人々はお金を使うことを止めようとしない。
いつの時代にも宗教や環境保護、その他の理由から、お金の追求や物質的な価値を否定する人々が存在する。しかし彼らは少数派だ。国民全体の福利を改善するには、大多数の人々の生活スタイルを抜本的に変革し、従来とは違ったものに変える必要がある。
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