「女性に体当たりする暴走中年」増えた根本原因 彼らはストレス社会が生み出した「被害者」か

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また「女性なら誰でもいい」かというと、そうでもなさそうだ。「髪色や服装を派手にしたり顔にピアスをつけていたりすると、そうでないときよりも被害にあいづらい」といった経験談も多く寄せられる。

そして最も効果的なのが「男性と一緒に歩くこと」だ。気が強そうに見える女性や、彼氏や配偶者からの反撃を受けそうな女性を前にすると、彼らはするすると身をかわすように人混みを縫って歩くことができる。

加害者に中年男性が多い理由

加害男性の容姿や服装を振り返ると、だいたい40代半ば以上でスーツ姿の男性がほとんどだった。60歳を超えていそうな男性もいるにはいたが、思い出せる限りでは2人か3人くらいで多くはない。

彼らが何を思って体当たりをしているのかは不明だが、表情を見る限りでは総じて深刻なストレスを抱えているように思えた。眉間にシワが寄り、眉はつり上がり、口元は歪んでいるか「へ」の字に固く閉じられていて、明らかに健全な人間の表情とはかけ離れているのだ。

一般的に40代半ばの会社員といえば、社内でそこそこのポストを任されていてもおかしくない年齢だ。彼らが若かりし20代の頃には就職氷河期があり、非正規雇用が拡大していくにつれ「勝ち組」「負け組」の格差が大きくなった。そして終身雇用も安定しない時期だ。

さらに少し前までの日本では、うつ病や自律神経失調症といった心身の不調への理解も乏しかった。今でこそ広く認知されているが、当時は心身に不調をきたすことは「甘え」だとされていたし、多くの人が「根性がないからそんなことになる」という考えを有していた。うつで休職するとなれば腫れ物にさわるように扱われ、職場復帰はほとんど絶望的な時代だ。

いつ自分の人生の基盤が崩壊するかもわからない時代を「自己責任」で生き抜いてきた彼らには、頑張ってきたという自負も、プライドも、空虚さも、この先への不安もあっただろう。

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