瀧本哲史「衰退する日本を見捨てなかった理由」 伝説の東大講義で明かした「人生で大事な事」

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その人、最初のうちはホント良くて、経済政策が大当たりして国の景気もむちゃくちゃ良くなり、「やっぱりあの人に任せて良かった」と国民の多くが思ったんですが、その後どんどん変なことをやり始めて、あちこちにいろんな敵をつくって攻撃したり、やたら戦争を起こしたりして、結果的にドイツは大変なことになりました。

はい、ナチスのアドルフ・ヒトラーって方です。けっこう今、日本もそれに近いところがあるんじゃないかと心配をしています。

『2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義』(星海社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ちょっと前も、理想的な政権がつくられたはずだったんですけど、フタを開けてみたらぜんぜんダメで、「政治家はどいつも当てにならない」って空気が蔓延してるところに、「西のほうにすべての問題を解決してくれるいい人がいるかもしれない」みたいな流れが、最近ありますよね。

でも、それってまずいんじゃないかと思うんですよ。そういうことじゃないんじゃないかと。誰かすごい人がすべてを決めてくれればうまくいく、という考えはたぶん噓で、「みなが自分で考え自分で決めていく世界」をつくっていくのが、国家の本来の姿なんじゃないかと僕は思ってます。

大事なのは「自分で考えて決める」こと

本にも書きましたが、仏教には「自燈明(じとうみょう)」という言葉があります。開祖のブッダが亡くなるとき、弟子たちに「これから私たちは何を頼って生きていけばいいのでしょうか」と聞かれて、ブッダは「わしが死んだら、自分で考えて自分で決めろ。大事なことはすべて教えた」と答えました。

自ら明かりを燈せ。つまり、他の誰かがつけてくれた明かりに従って進むのではなく、自らが明かりになれ、と突き放したわけです。

これがきわめて大事だと僕は思いますね。

瀧本 哲史 エンジェル投資家

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たきもと てつふみ

京都大学客員准教授、エンジェル投資家。東京大学法学部を卒業後、東京大学大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼーに入社。3年で独立し、日本交通の経営再建などを手がける。その後、エンジェル投資家として活動しながら、京都大学では「交渉論」「意思決定論」「起業論」の授業を担当し人気講義に。「ディベート甲子園」を主催する全国教室ディベート連盟事務局。著著に『僕は君たちに武器を配りたい』『武器としての決断思考』『武器としての交渉思考』がある。

【2019年8月16日18時00分編集部追記】2019年8月10日、瀧本哲史さんは逝去されました。ご逝去の報に接し、心から哀悼の意を捧げます。

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