コロナ直撃で1位は?大手私鉄の「利用客減少率」 3月のデータで各社比較、意外な減少要因も

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定期客と定期外客を合算した運輸収入の減少率を高い順にランキングすると、1位は京成で35.8%減、2位近鉄35.6%減、3位南海31.8%減、4位京急30.2%減、上位陣は定期外客の運輸収入のランキングと同じ顔ぶれとなった。減少率が最も低いのは相模鉄道で21.4%減。定期外の順位が最も低かったのが貢献したようだ。沿線に目立った観光施設がないことがかえって幸いしたのかもしれない。

では、4月はどうなるだろうか。空港アクセス路線を抱える京成、南海、京急の3社の減少率が他社よりも大きいという傾向も変わりないだろう。

小田急電鉄が5月14日に4月の月次営業概況を早々と発表した。その運輸収入は通勤定期が22.2%減、通学定期が92.1%減、定期計は33.5%減、定期外は73.3%減、定期と定期外の合計は57.7%減という内容だった。

学校が休校なのに4月の通学定期をわざわざ買う人はあまりいないだろうから、通学定期の92.1%減という数字は納得がいく。通勤定期は22.2%減だが、小田急によれば、2019年に発表したピーク時混雑率を100とした場合の4月9日の混雑率は約5割減、4月16日の混雑率は約65%減としているため、通勤定期の運輸収入は実際の利用者数ほど落ち込んでいないことになる。

コロナ収束後はどう変わる?

現在の大手私鉄の運輸収入の落ち込みは在宅勤務やテレワーク、外出自粛となった要因が影響している。しかし、コロナ問題の収束後は景気の低迷による運輸収入の落ち込みが心配される。大手私鉄全体の輸送人員はバブル崩壊後、1991年から2004年まで長期にわたって減少を続けた。2008年のリーマンショックのときも輸送人員は2011年まで落ち込んだ。

しかも、景気が回復しても鉄道利用が元通りになるとは限らない。小田急の石黒徹IR室長は、「コロナ以前の事業環境には戻らないのではないか」と懸念する。在宅勤務の進展による通勤客の減少や、デジタル消費の進展による外出抑制など、消費者の行動やメンタリティに不可逆的な変化が起こる可能性があるという。はたして、今回の「コロナショック」で、鉄道が果たす役割も大きく変わるのだろうか。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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