三越伊勢丹、百貨店大手で唯一赤字の根本原因 都心主力店に集中、コロナ禍で「吉」と出るか

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不動産事業の比重が小さいことも、経営の構造問題として挙げられる。同社の営業利益に占める不動産事業の割合は27%程度。J.フロントリテイリングの44%、高島屋の39%とは対照的だ。

商品を仕入れて販売する従来の百貨店ビジネスは売上高に対する利益の変動が大きいが、不動産ビジネスはテナントから毎月の固定賃料が入るため安定収益源となる。今回のように百貨店の店舗が一時休業しても、不動産ビジネスはグループ経営を底支えしうる。

4月からの新体制に秘めた意図

だが、業界最大手である三越伊勢丹は百貨店ビジネスに軸足を置く経営方針を貫く。日本橋三越本店に家電量販店のビックカメラを導入するなど、これまでにないテナント誘致を進めているが、不動産ビジネスを本格化しているとは言い難い。

また、J.フロントは数年前から「脱百貨店」を掲げ、不動産ビジネスを推進。2017年に松坂屋銀座店の跡地に開業したGINZA SIX(中央区)は、ラグジュアリーブランドを集結させ、テナントからの賃貸収入のみで運営している。

高島屋はショッピングセンターの開発を手がける子会社の東神開発を軸に、不動産ビジネスを他社に先駆けて展開してきた。2018年竣工の日本橋高島屋S.C.(中央区)は都心型のショッピングセンターとして運営し、需要が底堅い飲食店などのテナントを充実させている。

三越伊勢丹は今後も百貨店の主力店舗重視という姿勢を崩さないが、新しい展開をにらんだ布石は打っている。それが表れたのは、2月に発表した新しい役員体制と組織だ。4月1日以降、基幹3店のうち銀座三越は他の郊外店と並列にし、伊勢丹新宿店と日本橋三越本店だけ「別格扱い」とする。

この意味合いについて、三越伊勢丹の広報担当者は「両本店(新宿店と日本橋店)の強化と、銀座店の営業組織スリム化、意思決定の迅速化が目的」と説明する。

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