東大法卒、国家公務員の女性がキャリアを自問自答して
東京大学法学部を卒業後、永田町の国家Ⅰ種公務員として10年間、国会議員とともに法律案を作る仕事をしていた加藤良子さん(仮名、39歳)は、33歳のときに外資系IT企業に転職した。キャリアの軸である法律と、もともと得意だった英語を生かし、自分の力を試したいという思いが湧き上がってきたからだ。
「自分が本当にやりたいことは何か、毎日の繰り返しの中で流されていないか」と、つねに自問自答しているという。
年功序列や政治の世界の対応の遅さに疑問を持った加藤さんは、転職エージェントに「外資系企業に行きたい」と相談したが、「国家公務員で転職しようとする人なんて聞いたことがない。無理じゃないですか」とすげなく言われた。
加藤さんは自ら、大手外資系IT企業のサイトで法務の求人を見つける。グローバル企業の自由闊達な社風に引かれて応募すると、即、採用された。
企業法務を担当する部署に配属された加藤さんは、外資系のスピードの速さがも性に合い、年功序列の重しも取れて生き生きと働いた。年齢や肩書きにかかわらず、自由に意見が言え、合理的であれば採用される環境。やりがいとプライドを持って仕事ができたし、何より「私はこんなに自由に意見を言える人間だったのか」と、新しい自分に気づくことができた。
加藤さんは会社に籍を置きつつ、アメリカの大学院に留学し、法学修士号を取得する。通算5年勤めたが、またしても心の叫びが聞こえてきた。
「もっと経営に近いところで法律の仕事がしたい」
外資系の宿命として、重大な決定はアメリカ本社が主導権を握り、日本には限られた決定権しかなかったのだ。
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