ネットフリックスはいったい何がスゴいのか 1億ドル基金で世界中の映像制作支援の理由

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ネットフリックスが持つユーザーの視聴データと、それを解析するAI技術は、オリジナルコンテンツの制作にも生かされています。たとえば、アメリカに社会現象を起こしたといわれる、2013年 制作のオリジナルドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』に、さまざまなデータが活用されているのは有名な話です。原作の選択から監督や俳優のキャスティングまで、いわばAIがプロデューサーの役目を果たしたわけです。

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『ハウス・オブ・カード 野望の階段』が大ヒットし、さまざまな賞を受賞したことで、それ以降データを活用した作品づくりはハリウッドだけでなく、数多くの国の映像作品で見受けられるようになりました。

前述したように、動画配信サービスの競争は激化しています。そのため、「ネットフリックスはゲーム業界に新規参入するのではないか?」という見方が広がっています。しかし、ゲーム業界もまた、ソニーやマイクロソフト、テンセントなど強豪がひしめき合っている市場。ネットフリックスといえど、そうやすやすと攻略できるとは考えられません。

映画コンテンツでゲーム業界に参入も?

もっとも近年、映画のような画像が楽しめる「シネマティックアドベンチャーゲーム」や、映画の中の主人公を操作している感覚が味わえる「シネマティックアクションゲーム」といったジャンルが、世界的に人気を呼んでいます。もし、ネットフリックスがゲーム業界に参入して、オリジナルコンテンツの制作で培ったノウハウを応用した〝シネマティック〟なゲームを制作できれば、健闘する可能性も十分あります。 ゲームのプレーヤーが望むようなラストが演出できる「マルチエンディング」なども面白いかもしれません。

以上、ネットフリックスの特徴などについて述べてきました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、自宅で過ごす人が世界中で増えていることから業績が伸びることが期待される一方、競争環境の激化などマイナス面も抱えているネットフリックス。冒頭に述べた1億ドルの救済基金の立ち上げのような活動も行っているネットフリックスには、愛用者の1人として、引き続き頑張ってほしいと思っています。

田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授

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たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

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