コロナ禍以前から、安倍首相の政権運営に対する支持派と不支持派の対立が際立ってきた。「メディアも含めた安倍政治をめぐる国民的分断の深さ」(閣僚経験者)が今回の騒動を巻き起こしたようにも見える。アンチ安倍グループにとっては「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」となり、これに安倍シンパが徹底攻撃するという構図だ。
しかも、アンチ派の安倍首相攻撃を拡大させたモリカケ疑惑や桜を見る会問題での政権の「逃げ恥作戦」は、星野氏も出演して話題になったテレビ番組「逃げるは恥だが役に立つ」をもじった揶揄だ。それだけに今回の騒ぎは「妙な因縁」(自民若手)も絡む。
「訴える力」が足りない安倍首相
ただ、自らの言葉で切々と国民の覚悟と協力を訴えたドイツのメルケル首相や、自ら感染しながら、必死の表情で国民への発信を続けるイギリスのジョンソン首相と比べ、「安倍首相の訴える力と悲壮感は明らかに不足している」(自民長老)との声が多いのも事実だ。
安倍首相は、緊急事態宣言に先立って自らの政治決断で決定した「全世帯への布マスク配布」がネット上で「アベノマスク」として大炎上したばかり。にもかかわらず、今回も「アベノコラボ」と揶揄される事態を招いたのは、「官邸の危機管理のお粗末さ」(政治評論家)との批判の声も相次ぐ。
13日朝の民放テレビは、この「アベノコラボ」騒ぎを面白おかしく伝えた。その一方、新聞は朝刊休刊日にあたり、一部大手紙がネット配信で触れるにとどまっている。このため、首相サイドには「騒ぎは一過性。評価する声もあり、首相の真意は遠からず国民に浸透する」との楽観論もある。菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で「過去最高の35万以上も『いいね』をいただいて、多くの人にメッセージが伝わった」とコメントした。
小池百合子東京都知事を筆頭に、全国の知事は「自らの地元での感染数拡大によるオーバーシュート阻止」に必死の形相で取り組んでいる。その危機感を「ワンボイス」で国民に訴えるのが安倍首相の役割だが、今回は「それとは程遠い低レベルの騒動」(閣僚経験者)にみえる。
このため、永田町や霞が関では「政治と官僚と首長と国民がまさに『ワンチーム』となることが必要なのに、(安倍首相は)何をしているのか」(首相経験者)との声も広がっている。
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