ヤマト、ヤフーとのタッグ結成に見るジレンマ 荷物量の回復と料金引き下げの狭間で揺れる
2020年に入ってからヤマトは荷物の確保を急いでいる。2月にフリマアプリ大手であるメルカリへの新たな集荷サービスの提供を発表した。メルカリはユーザーが荷物を発送できる無人投函ボックス「メルカリポスト」を2023年までに全国5000カ所で展開する予定だが、そのポストに投函される荷物の集荷をヤマトが担う。
メルカリの年間国内流通総額は4902億円(2018年7月~2019年6月)に上る。これまでもヤマトは(メルカリユーザーの支払う)配送料を抑えた「らくらくメルカリ便」などを提供しているが、メルカリ専用の集荷サービスを提供することでさらに連携を強化した形だ。
値上げで荷物が戻らない
複数の業界関係者は「ヤマトは荷物をかき集めるのに必死だ」と語る。その背景には配送料の値上げによる顧客の離反がある。2016年に労働基準監督署から是正勧告を受けたヤマトは、ドライバーの働き方を含む構造改革を迫られた。そこで同社は、2017年に引き受ける荷物量の抑制(総量規制)と配送料の値上げを発表し、従業員の労働環境と事業の採算性の改善を進めた。
ところがヤマトによる配送料の値上げを受け、最大顧客であったアマゾンはコスト削減のため中小運送会社を「デリバリープロバイダ」として組織化し、独自の配送網を構築し始めた。中小規模の顧客もヤマトから他社に配送委託先を切り替え始めたことで、ヤマトは多くの荷物を失ってしまった。宅急便の荷物量は、2018年3月期に18.3億個(前年比1.7%減)、2019年3月期に18億個(前年比1.8%減)と減り続けている。
ヤマト側は当初、2020年3月期には荷物量が回復すると見込んでいたが、ふたを開けてみると、足元の宅急便取扱個数は17.9億個(2019年4月~2020年3月までの累計、前年比0.2%減)と苦戦している。
期初時点の通期業績予想は、売上高1兆6950億円(前期比4.3%増)、営業利益720億円(同23.4%増)と大幅な営業増益を見込んでいたが、2度の下方修正を経て、今や売上高1兆6300億円(前期比0.3%増)、営業利益400億円(同31.4%減)と一転して大幅減益となる見通しだ。「事業環境が変化しているなか、宅急便に限らず顧客に合わせたサービスを提供していかなければならない」(ヤマトHD長尾社長)。
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