コロナ不安で急増?鉄道人身事故が週30件超に 3月18日には1日7件も発生、JR神戸線で多発

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鉄道自殺は鉄道運行全体にとって多大なる被害を与える。発生後から再開までの間は列車の運休、振替輸送分や払い戻しの負担がのしかかる。ただでさえコロナウイルスの影響により各社とも減収傾向であるのに、鉄道自殺が増えればさらに収益の下方圧力となる。

当然のことながら自殺者が飛び込んでくると、運転士にとっても危険だ。列車のフロントガラスにぶつかり、運転士がガラスの破片や自殺者にぶつかってケガをしてしまうことも多々ある。

身体的な危険だけではなく、運転士への精神的な影響も計り知れない。前方で危険を察知しても自動車のようにハンドルを切ることはできないので、非常ブレーキを入れることと、非常事態を知らせる警笛音を吹鳴するしか術はない。それが間に合わなければ接触するしかない。

人をひいてしまうことに加えて、事故直後の処理がトラウマになる可能性も大きい。事故直後は控えている乗務員と交代できることもあるが、また勤務復帰すれば嫌でもその現場を通るとフラッシュバックするし、ひどい場合はPTSDを患ってしまうこともある。

それは運悪く凄惨な事故現場に遭遇してしまった乗客も同じくだ。おそらく自殺志願者本人からすれば、後に起こる事故処理や損害賠償請求など知る由もないが、鉄道自殺というのは、周辺の関係する人々にとって負のスパイラルにしかならない。

鉄道自殺を未然に防止するための策は?

このような鉄道自殺、とくに駅ホーム上での事故を防止するために、鉄道事業者はさまざまな対策を行っているが、転落防止に向けた主な3つの対策を紹介したい。

1点目は誰もが目にするホームドアの設置だ。ホームドアがあればフラッと飛び込むことは難しいので、物理的な転落防止となる。ホームドア設置駅では実際に事故発生数を減らしている。ただし、設置状況については十分なものと言えず、1駅当たり億単位ともいわれる多額の費用・メンテナンス面から見てもすべての駅に導入できるわけではない。

2点目は駅係員・監視員の配置だ。線路・ホーム上に異常がないか監視することで、いざというときの列車停止措置などの初動をとることができる。何より「見張り役」としての抑止効果にもつながる。

ただし、現在は「駅遠隔操作システム」などの普及が進んで、無人駅や無人の時間帯が増え、監視カメラに頼っている駅もある。本来であれば各駅に監視要員を配置できるのが理想的だが、経営の省力化が進む今の状況では現実問題として難しくもある。

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