コロナ不安で急増?鉄道人身事故が週30件超に 3月18日には1日7件も発生、JR神戸線で多発

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3点目は線路上に人が落ちたことを知らせる「転落検知マット」や、利用客自ら押すこともできる「非常停止ボタン」等の保安装置の存在である。これらが発動すれば連動する警報ブザーや信号機が作動し、運転士が直ちに停止措置を行い、ATS(自動列車停止装置)等の装置が整っていれば、自動的に非常ブレーキが作動する。

ほかにも一部の駅では自殺防止に効果があるとされている青色照明を駅に点灯させたり、自殺防止の啓発ポスターなどの地道な対策も行われているが、志願者の心理に訴えかけるもので、物理的に防げるというものではない。高架の新幹線でさえ、乗り越えて侵入してしまう自殺志願者もいるように、人間が行うことなので100%の防止策というのは列車が運転している限り難しい。

もし自殺志願者に遭遇したとき、何ができる?

それでは利用者である私たち、とくに現場で自殺志願者に遭遇した場合、どのような手が打てるだろうか。

鉄道事業者も再三注意を促しているように、万が一駅ホームで自殺志願者が線路上に飛び降りる場面に立ち会ってしまったとしても、決して後を追って線路上に降りてはならない。 

過去の事例から見ても線路上に降りるのは非常に危険だ。思い出されるのが2001年に発生したJR山手線・新大久保駅で発生した転落事故だ。これは自殺とは異なるが、泥酔して線路に転落した男性を助けようとしてカメラマンの男性と韓国人留学生が線路に降り、3人とも死亡してしまったという何とも痛ましい事故があった。

この事故を踏まえ、国土交通省は駅ホーム上に非常停止ボタンなどの安全装置を設置するよう鉄道事業者へ促した。その甲斐もあり現在多くの駅に非常停止ボタンが備え付けられることとなった。

もしも線路上に降りた人を見かけた場合には、まず非常停止ボタンを押すことが先決だ。それによって、非常停止のための機能が作動する。

毎日のように人身事故の報道を目にすると、ついつい一言目に「またか……」と、人の死よりも先に列車の遅延に対していら立ちがちである。死に対する慣れということは大変恐ろしい。コロナウイルスによる死亡率もさることながら、それに関連する「経済的な死」を止められるような国の舵取りに期待し、社会全体として解決すべき問題として考えていきたい。

西上 いつき 鉄道アナリスト・IY Railroad Consulting代表

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にしうえ いつき / Itsuki Nishiue

大阪府出身。関西大学商学部卒業後、名古屋鉄道株式会社に入社。運転士・指令員などを経験したのち退社。その後、外資系企業を経てIY Railroad Consultingを設立。著書に『鉄道運転進化論』(交通新聞社新書)、『電車を運転する技術』(SBクリエイティブ)。東京交通短期大学非常勤講師。二次交通「RYDE」エバンジェリスト。Yahoo!ニュース公式コメンテーター。鉄道系YouTuberとして「鉄道ゼミ」を運営。地域おこし協力隊(銚子電鉄)。まちづくり戦略研究学会監事。

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