福島のJヴィレッジ、「除染せずに返還」の真相 東電の会見で新事実、国のルールに相違

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グリーンピースによるJヴィレッジ近隣の駐車場脇でのホットスポット調査(写真:グリーンピース)

そのうえでグリーンピースは「深刻な公衆衛生上のリスクと考えられる高いレベルの汚染が検知された」と指摘し、Jヴィレッジ周辺エリアでの広範囲の放射線調査および除染の実施を求める緊急の要請書を小泉進次郎環境相に提出。それを受けて環境省が空間線量を測定した結果、毎時1.79マイクロシーベルトという「ホットスポット」(局所的な汚染箇所)の存在が裏付けられた。

駐車場を事故収束作業のために使用していた経緯があったことから、それを踏まえて東電が汚染土壌の除去や砕石を敷き詰めるなどの線量低減措置を実施した結果、空間線量は毎時0.39マイクロシーベルトに下がった。こうした線量低減のいきさつは、環境省のホームページで開示されている。

除去した土壌の汚染レベルは?

しかし、ホットスポットで採取された除去土壌の汚染レベル(放射性セシウム134および137の合計で1キログラム当たり103万ベクレル)は、当初明らかにされなかった。

東電はこの数値を、駐車場の所有者である楢葉町に2019年12月27日付のメールで知らせた一方、福島県には測定した箇所のうち最も高かった数値だけを今年1月27日に口頭で伝えた。環境省へのメールでの報告は、この問題を2カ月以上にわたって取材してきたフリージャーナリストのおしどりマコ氏への東電による回答から5日後の2月18日と、大幅に遅れた(おしどりポータルサイト第一報続報)。

除去した土壌の汚染レベルについて東電は、自社内で汚染土を管理する目的で測定したことを理由にホームページ上での情報開示を拒んできたが、騒ぎが大きくなった後の3月26日にようやくホームページ上でデータを開示した。なお、東電は駐車場脇のエリアについて、楢葉町に引き渡す前に除染を実施していなかった事実も明らかにした。東電はグリーンピースの指摘後に初めて除染を実施した。

そして今回、東電の定例会見での質疑を通じ、Jヴィレッジ施設そのものでも、環境省のルールに従った除染が行われていなかった事実が判明した。

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