新型ウイルスを正しく怖がるためにできる心得 大半の「感染症」は根絶することが難しい理由

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

感染症の問題を扱う専門家や厚生労働省は、新型コロナウイルスのような感染症を「新興感染症」と呼んでいます。

WHOによると、局地的あるいは国際的に公衆衛生上の問題となる新しく認識された感染症が、この新興感染症といわれています。また、再び流行し始めて患者・感染者が増加している感染症は「再興感染症」と呼ばれ、どちらも感染が拡大すると、甚大な被害をもたらす危険性があり、その病原体の多くがウイルスであるとされています。

ちなみに古代から「悪魔の病気」と恐れられ、人類に大きな被害を出してきた天然痘(疱瘡、痘瘡)に対し、WHOは種痘のワクチンを駆使して1965年から本格的な根絶作戦を展開して根絶計画をみごと成功させました。

地球上最後の天然痘患者は、1977年10月26日に発病した東アフリカのソマリアの青年で、2年半後の1980年5月、WHOは天然痘根絶を宣言しました。天然痘が根絶できたのは天然痘ウイルスが人だけに感染する病原体だからであり、そうしたウイルスは人の間での流行を食い止めることさえできれば、根絶の可能性はあります。

「新型コロナウイルス」―正しくこわがるにはどうすればいいのか―(扶桑社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

しかし、新型コロナウイルスの場合は人畜に共通する感染症の可能性があります。

20世紀後半には、農業や工業の発展で森林が次々と開発され、人間が野生動物の生息地域に入り込んでいった結果、野生動物との距離は近くなっています。野生動物はウイルスと共存しています。

つまり、ウイルスの自然宿主となるため、当然、そこで人間はその未知のウイルスに感染することになります。アフリカの熱帯雨林に生息するコウモリから人に感染していったといわれるエボラ出血熱は、まさにこうした感染症の代表格であり、新型コロナウイルスもまたそうした病原体なのかもしれません。

正しい予防法を知ることが大事

日本で一時、アウトブレイク(都市型感染拡大)したデング熱も根絶はできないといわれています。それはデング熱が、特定の蚊に刺されることで感染するものであり、デング熱ウイルスを持つ蚊が媒介し、人→蚊→人で感染が拡大するという仕組みになっているからです。

そのうえ、熱帯の野生のサルの間でも蚊を介して感染しているため、蚊を絶滅させない限り、感染は断ち切ることができません。つまり、大半の感染症が根絶できないと考えたほうがよいうということになります。ならば私たちはどうするべきなのかを考えることが求められます。

これに関しては、日々の手洗いなど、正しい知識に基づいて日ごろから健康管理と予防を十分に行い、ワクチンや治療薬、抗菌剤を適切に使ってウイルスや細菌などの病原体をコントロール(制御)しながら、感染症とうまく付き合っていくということ。これが正しくこわがることであり、新型コロナウイルスにも同じことがいえるのではないでしょうか。

木村 良一 ジャーナリスト、作家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

きむら りょういち / Ryoichi Kimura

1956年10月18日生まれ。慶應義塾大学卒。慶大新聞研究所修了。ジャーナリスト・作家。日本医学ジャーナリスト協会理事。日本記者クラブ会員。日本臓器移植ネットワーク倫理委員会委員。三田文学会会員。元産経新聞論説委員・編集委員。元慶大非常勤講師。2002年7月にファルマシア医学記事賞を、2006年9月にファイザー医学記事賞を受賞している。産経新聞社には1983年に入社。社会部記者として警視庁、運輸省、国税庁、厚生省を担当し、主にリクルート事件、金丸脱税事件、薬害エイズ事件、脳死移植問題、感染症問題を取材した。航空事故の取材は運輸省記者クラブ詰め時代(1989年~1991年)に経験し、日航ジャンボ機墜落事故の刑事処理(不起訴処分)などを取材した。社会部次長(デスク)、編集委員などを経て社説やコラムを書く論説委員を10年間担当し、2018年10月に退社してフリーとなる。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事