三菱電機「8年で自殺5人」何とも異常すぎる職場 長時間労働が横行、「殺す」と脅すパワハラも

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情報技術総合研究所(神奈川県鎌倉市)に勤務していた小山さんの上司は、「おまえの研究者生命を奪うことは簡単だぞ」などの暴言を日常的に繰り返していた。同じ部署にはメンタルヘルスを害し傷病休暇中や休職中の人が何人もいたという。さらに、上司は残業時間を月40時間以内に調整して申告するよう、部員に指示していた。小山さんの残業時間は最長月135時間に及んでいたが、長時間の申告をすれば上司に怒られるためサービス残業を続けた。

三菱電機では長らく、自己申告の勤務記録と入退室記録に大きな差異があっても、「自己啓発時間」や「休憩時間」として扱い、放置していた。一連の問題を受け、ようやく同社は「2017年から2018年にかけ、入退室記録やパソコンのログオン・ログオフ時間と照合し、自己申告の勤務時間とずれがないか上司が確認するシステムを導入した」(広報部)。

しかし、勤務時間の管理が徹底されても、パワハラ体質が払拭されたわけではない。指導員の嫌がらせが原因で辞職した元社員は、「『大して仕事を与えていないのに、なぜ残業しているのか』と責められた」と話す。

情報流出や出荷検査不備は無関係か

パワハラだけが問題ではない。「失敗やミスを相談できる環境ではなく、前任者がミスを隠したまま異動、退職していた」(元社員)、「コンプライアンス違反の行為を先輩から引き継いでいた」(社員)、といった声も聞こえてくる。

今年2月、三菱電機は社内ネットワークが外部からのサイバー攻撃を受けた問題で、これまで流出していないと説明していた防衛に関する重要な情報が流出した可能性があると発表した。同じ日には、パワー半導体の一部製品の出荷検査不備も明るみになったが、顧客への報告が発覚から半年以上も遅れていることがわかった。

こうした不祥事や対応の遅れは、パワハラに起因する失敗や不正の隠蔽体質と無関係ではないはずだ。

2012年に亡くなった大木さんの父親は言う。「会社の方からは息子の開発した製品が海外で売れていると聞きました。うれしい反面、それで命を削ったんだよなと……」。

労災認定されたり亡くなったりした社員の多くは、製造業の根幹である研究開発や製造の現場にいた。こうした有為な人材を使い潰してきた企業体質に、経営陣は真剣に向き合わなければならない。

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井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ゲーム・玩具、コンテンツ、コンサル業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、医療機器、食品など。趣味は東洋武術。

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