コロナ対策、鉄道会社「電車の消毒」の実態は? 国鉄時代は別の理由で消毒に力を入れていた

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そういえば、窓際の席に座ると窓の上に吹き出し口がある。不快なら羽根の向きを変えられる。ちなみに、換気量については交通機関や建物の種別に応じて法令で基準値が定められている。基準値は室内空間に対する人口密度などの違いによって異なり、東海道新幹線の車両は基準値を上回る換気能力があるという。

「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」では、換気の励行と人の密度を下げること、至近距離で会話する環境を作らないことが推奨されている。新幹線車両は換気が行われている上に、公共交通機関の中でも座席間隔や頭上空間が広い。満席状態でも人の密度は低い。不特定多数が接近して会話する場面もない。

小田急電鉄は消毒周期を大幅に短縮

大手私鉄の通勤車両、特急車両についてはどうか。小田急電鉄に聞いた。通勤車両については、年に1回だった消毒作業を、2月21日から15日間かけて全車両で実施し、それ以降も15日周期で消毒作業を実施しているという。特急ロマンスカー車両は、90日に1回だった消毒周期を7~10日おきに短縮しているとのこと。消毒剤は塩素系除菌剤(次亜塩素酸ナトリウム)。作業方法は拭き清掃および噴霧器で噴霧後拭き取り清掃である。

【2020年3月18日16時10分 追記】記事初出時、ロマンスカー車両の消毒周期の記述に誤りがありましたので、上記のように修正しました。

消毒重点箇所は、窓回り・開き戸・引き戸・つり革・手すり・握り棒・テーブル・カウンター回り・洗面所・トイレ・鴨居手掛けとのこと。小田急電鉄に限らず、最近の新型車両はつり手に抗菌素材を使われているほか、汚れにくい金属表面加工の部品を使っている。殺菌効果が見込まれる空気清浄システムも搭載している。

海外旅行客の利用が多いスカイライナーはどうか。京成電鉄に聞いた。「新型コロナウイルスの状況を踏まえ、2月5日より段階的に消毒を行っておりましたが、2月18日以降は7日前後の周期で全車両の消毒を行っています」という。スカイライナーは噴霧消毒および手すりなどの拭き上げを実施。通勤車両は手すり、つり手などに重点的な噴霧消毒を行っている。

京成電鉄はいままで消毒作業を実施していなかった。これは意外だけれども、衛生面が向上したため必要ないという考え方があったかもしれない。そのあたりを、えちごトキめき鉄道社長の鳥塚亮氏に解説してもらった。

「(国鉄時代は)輸送規定に車両の消毒という項目があったようですが、現在はその規定がなくなったため定期的な消毒はやっていなかったのではないでしょうか。トイレ等の衛生面が向上したので、通常の清掃だけで十分との判断かもしれませんね」

【2020年3月18日16時10分 追記】京成電鉄に対して車両の消毒に関し「通常はどのくらいの周期で実施していますか」という質問をしたところ、「通常行う定期清掃での消毒作業は行っていません」という回答があり、それに基づき記事を作成しましたが、記事公開後に京成から「通常の定期清掃では除菌作業を行っていた。消毒作業は通常は行わないが、2002年のSARS、2011年のインフルエンザの際は消毒を実施。2019年にはしか患者乗車が判明したときは該当車両のみ消毒殺菌した」という説明がありました。

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