橋下徹氏「交渉で相手を動かす手法は3つだけ」 自分の目的を達成するのに必要なのは交渉力

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さらに、2010年に大阪維新の会を結成して、府議会・市議会において議席を獲得したが、当時、大阪市議会において維新の会は少数与党であり、年度ごとの予算を通してもらうには、他党との交渉が必要だった。こんな具合に、知事・市長としての仕事の大半は「交渉」だった。

職員の側から見ても同じだろう。役所には役所の考え方があり、彼らはそれを実現させたいと思っている。実現させるには、知事・市長である僕(上司)と「交渉」して、話をつけなければならない。

自分の目的を達成するためには、政治・行政の世界でも、ビジネスの世界でも「交渉力」というものが非常に重要になる。

交渉は大きく分けて2パターンしかない

僕のやってきた交渉は、弁護士時代の若い頃と、大阪府知事・大阪市長になってからでは大きく違う。弁護士としての交渉は、相手側からの不当な要求を拒んだり、こちらの要求をのませたりするものが多かった。こうした交渉は、いわば「敵対的交渉」だ。

知事・市長になってからは、「敵対的交渉」は減り、「協調的交渉」が主体となった。協調的交渉とは、お互いが納得し、それぞれ得るものがある、いわばWin-Winの交渉だ。

ビジネスの現場では、このような「協調的交渉」が多いだろう。ただ、時には「敵対的交渉」も必要になるかもしれない。「協調的交渉」と「敵対的交渉」の両方を知っておけば、最強の交渉術となる。

「敵対的交渉」、いわばケンカ闘争において、自分に有利に運ぶための大きな戦略・策略などの知見をいちばん持っているのは、言うまでもなく実際にケンカ闘争で生き抜いてきた面々だ。極論すれば「ヤクザ」な人たち。インテリたちは、交渉術についても机上の論を語ることは得意だが、実際のケンカ交渉術には知見がない。

弁護士時代、僕のところに依頼が来る事件は、依頼主企業の百戦錬磨の交渉担当者が手に負えない案件ばかり。相手が大阪独特のややこしい人たちや、それこそ反社会的勢力の場合も多い。 

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