ZOZO、「ゾゾシューズ」の手堅い戦略は吉か凶か 大失敗したゾゾスーツとPBの反省をいかす

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ゾゾスーツを無料配布した際との最大の違いは、ZOZOはあくまでサイズを提案することに徹し、靴のPBを作らないということ。伊藤取締役は「特定のブランドとの共同開発ならあるかもしれないが、完全に自社で靴を作るのはZOZOにとって“専門外”過ぎるので、ハードルが高い」と話す。

計測データを基に独自でオーダー靴を作る構想も当初はあったようだが、ZOZOには大赤字を出したアパレルPBやゾゾスーツの苦い教訓がある。PB事業の責任者でもあった伊藤取締役は、ゾゾスーツの配布を焦り過ぎたことに加え、ZOZOブランドの魅力を訴求しきれなかったことが、一連の失敗の要因だったとみる。

「ストリート系ブランドやサーファーズブランドにはブランドの世界観があって、特定の人が集まるのに対し、ZOZOというブランドの商品には、サイズ以外に欲しくなる要素を作れなかった。売り上げ計画もものすごく高かったから、事前にたくさん作ってしまい、それが思うように売れず在庫評価損もボンボンとかさんでしまった」(伊藤取締役)。

この教訓を基に、靴ではPBには手を出さないことを決断。ゾゾシューズでは、ゾゾマットを活用したサイズ提案のほか、撥水・防水やクッション性など靴ならではの検索機能を充実させ、より顧客が靴を選びやすいサービスの展開に注力するという。

世間の反響は減少

ゾゾスーツ時の多くの反省を生かして、手堅い経営姿勢が垣間見えるZOZO。ゾゾスーツほどの製造コストや送料もかからないゾゾマットは、無料配布に伴う費用が会社の利益を大きく圧迫することもないだろう。

3月4日の発表会に登壇したZOZOの伊藤取締役(中央)とタレントのMattさん(右)(写真:ZOZO)

気になるのは世間の反響の乏しさだ。3月4日時点でのゾゾマットの予約数は約71万件。予約開始から半年足らずで100万件以上の注文が殺到したゾゾスーツと比較すると、消費者の多くは当時ほどZOZOの動きや新サービスに関心を抱いていないように映る。

「昨年6月のリリース以降、今日(3月4日)までほとんど宣伝をせず、こちらからあえて話題を作ろうとしなかった。急いで煽って、一度にゾゾマットを何百万人にもらっていただく必要はない。欲しい人に早いタイミングで届けて、まずは計測を増やしていく。PBの教訓もあり、配り方、盛り上げ方は考えている」と、伊藤取締役は言う。

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