OPEC総会は「新型肺炎」にどう対処するのか 世界景気低迷に新型肺炎ショックが重なる

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ただ、OPECプラスの行動がどのくらい油価にインパクトを与えるのかはわからない。というのも、新型肺炎の終息時期が不透明だからだ。参考になるのは、2003年に中国で発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)だ。SARSは世界的な感染拡大を抑止できたことや、3カ月程度で深刻な局面を脱したため経済への影響は一部にとどまった。

SARSが流行した当時と比べ、国際エネルギー機関(IEA)は、「今や中国はグローバルサプライチェーンの中心」だと指摘。世界経済における中国の存在感が大きくなり、中国発の新型肺炎が経済に与える影響に警鐘を鳴らしている。

FRBの緊急利下げも油価に影響

また、SARS当時になかった要素として大きいのが、アメリカのシェールオイル生産だ。シェール革命によってアメリカは世界最大の産油国となり、このまま油価の低迷が続けば増産ペースにブレーキがかかるとみられる。こうしたことも油価を押し上げる方向に働くだろう。

もう一つ油価を左右しそうなのが各国による金融緩和だ。アメリカのFRBは3月3日、新型肺炎の影響を踏まえ、0.5%の緊急利下げを発表した。アメリカ以外が金融緩和策で続くことも考えられ、金融緩和策も油価に大きく影響しそうだ。

今後の油価について、藤山氏は「今年秋ごろまで1バレル40ドルから65ドルのレンジ圏で推移する」と分析する。ただ、これは5月中に新型肺炎の患者数が減少傾向に転じるなど、新型肺炎の終息にメドがつくことを前提としている。

仮に新型肺炎の影響が長引けば、原油価格の低迷は長期化する可能性がある。2020年は今まで以上に油価動向を読みにくい1年となりそうだ。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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