新幹線N700S、試験車と量産車の「超」微妙な違い 2年かけ磨いた技、7月のデビューで本領発揮

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N700Sは外からは見えにくい場所に最先端の技術が詰まっている。パンタグラフから取り入れた電力をモーターに供給する「主変換装置」には高速鉄道で世界初となるSiC(炭化ケイ素)素子を採用。発熱が少ないため冷却機構も簡素化できた。N700系の初期車よりも幅寸法を半分以下に減らせ、主変圧器やモーターを含めた駆動システム全体で編成当たり約10トンの軽量化を可能にした。

足元に詰まった最新の技術

車両の機器配置の制約が緩和されたことで、16両編成の基本設計のまま、12両や8両などに編成の長さが変えられる「標準車両」が実現する。また、軽量化と床下の省スペース化によって、これも高速鉄道で世界初という「バッテリー自走システム」が搭載可能になった。このシステムによって停電時でも自力で安全な場所まで移動することができる。

駆動モーターの小型・軽量化で台車に新技術を搭載できるようになった(撮影:梅谷秀司)

台車部分では、電磁石を従来の4極から6極に増やしてコンパクトになった駆動モーターを使用。モーターの小型・軽量化によって台車にさまざまな新技術を盛り込めるようになった。

モーターの回転力を車輪に伝達する歯車には2方向の歯を組み合わせた「ヤマバ歯車」を採用。ヤマバ歯車も新幹線の営業車両に使うのは初めてだ。担当者は「かみ合いが滑らかになることで振動や騒音が小さくなるうえ、歯と歯の間で負荷が相殺されるため軸受けが長持ちする」とメリットを説明する。

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