伊藤雅俊・味の素社長、現地食習慣に入り込む 「浸透に10年はかかります」
味覚の一つ「うま味」が発見されてから1世紀。その「うま味調味料」から始まった味の素は、今や飼料や医薬品事業にも進出し、売上高の3割を海外で稼ぐグローバル企業へと姿を変えた。先進国の低価格志向や新興国の台頭など消費をめぐる環境が激変する中で、どう生き抜くのか。創業100年の節目で就任した伊藤雅俊社長に、次の100年に向けた戦略を聞いた。
──記念すべき年に社長に就任されましたが、期するところは。
私は12代目だそうですが、いいタイミングで社長にさせてもらえました。前任の山口(範雄・現会長)には優秀だからという理由ではなく、100年目だから交代すると言われました(笑)。ただ、私の理解では「100年目だから」というのは、次の100年に向けてエネルギーや考えを蓄え、新たな段階へ向かう基盤を作れという意味だと考えています。
──具体的には、どのような会社を目指していくのでしょうか。
味の素は「うま味」からスタートしましたが、食の分野ではこれを利用して調味料から加工食品、冷凍食品や飲料まで事業が広がっています。また、うま味がアミノ酸だったということで、これを人や動物に利用できないかと考えてきた。そこから、アミノ酸を飼料や甘味料、医薬品に使う仕事が増えてきました。
現在の事業は食とアミノ酸、医薬品に代表される健康と、この三つの分野が重なり合っている。最近ではアミノ酸発酵技術を利用して化粧品開発にも乗り出していますが、重なりながら広がっていくというのが当社の特徴です。食から始まり、アミノ酸、医薬品まで事業を広げた食品会社は世界に類がないでしょう。
おいしさを追求していくうえで、うま味を見つけ出し、アミノ酸へとつなげていく、という本質を追究していく精神があったからこそ事業範囲を広げてこられた。今後もこういう特徴を生かしていこうと。具体的には食と健康、命のために働く「グローバル健康貢献企業」という旗を立ててやっていきたい。
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