レトロな木造「嘉例川駅」は空港アクセス抜群だ 意外な「空港最寄り駅」で楽しめる旅の風情
距離で言えば3km程度、本数は少ないものの駅近くを通る路線バスもあるし、タクシーに乗ったとしても1500円弱で済む。その気になれば歩けないこともない。
実は私自身、しばらくこのことに気づいていなかった。険しい山岳路線で知られる肥薩線であり、列車で行くものだと思い込んでいた。
初めて下車したのは2007年、特急「はやとの風」利用であった。観光向けの停車なので、発車間際になっても列車に戻ろうとしない私に、アテンダントさんが「乗らないのですか?」と不思議そうな顔で尋ねたあと、会釈して車内に戻っていった。
観光客の喧騒が去り、駅に1人取り残されると、急に静寂が訪れ、時間の進みが遅くなった。古い木造駅舎は、しんとした森の中にひっそりとたたずんでいる。
晴れた夏の日であった。待合室で、長年使い込まれた焦げ茶色の木製ベンチに腰掛け、昔はにぎわっていたという往時の様子に思いをはせていると、黒いアゲハチョウが迷い込んできた。鈍い光沢を放つ翅が艶めかしい。
いつかまたこの駅に来よう、と考えながら後続の普通列車に乗った。
空港のすぐ近くだが…
時は経ち、Jリーグの応援で九州に向かう際、どの空港から入ろうか検討するために地図を眺めていたときのことだ。鹿児島空港のすぐ近くに嘉例川駅があるではないか。これはうかつだった。以来、鹿児島空港を利用する際は必ず「空港最寄り駅」として嘉例川駅に向かっている。
それにしても、この駅が空港最寄りなのがあまり知られていないのはもったいないと思う。
今回、霧島市役所の企画部・地域政策課に話を伺う機会があった。やはり嘉例川駅が空港に近いことはあまり知られていない、とのことであった。
けれども課題は認識しているそうで「霧島市地域公共交通網形成計画【改訂版】(案)」(2020年1月31日公開)にて、空港から嘉例川駅や隼人駅などの鉄道駅までのアクセス利便性について、路線バスの運行ダイヤ見直しや、タクシーを活用した移動手段の確保などに言及している。
「霧島市地域公共交通計画」(2017年4月1日発行)でも「空港で乗継のための待ち時間を過ごす人を対象に、2つの温泉郷(新川渓谷温泉郷、日当山温泉郷)に誘導する仕組みをつくる」とも記載されている。
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