薄氷を踏むアメリカ医療保険改革法案、オバマ政権の行方を左右
法制化のプロセスで責任重大なのは下院議長のナンシー・ペロシ女史(民主党)と上院院内総務のハリー・リード氏(民主党)である。下院の法案については“ペロシ・ケア”(社会主義的な医療保険制度)と共和党議員から皮肉られている。民主党議員のなかにも“社会主義”への傾斜を嫌う議員はいる。下院で法案を通すには218票が必要であり、ペロシ女史は共和党議員だけでなく、民主党保守派にも気を配らなければならない。
上院では100議席中、民主党が58議席、無所属が2議席(民主党寄り)を占めている。上院の民主党議員は下院議員よりも穏健派が多い。ただ、院内総務のリード氏が支持している“パブリック・オプション”(公的保険の選択)に対して懸念する向きもある。
下院法案と上院法案(目下、検討中)の相違点は以下のとおりだ。
■共通点:
・保険加入を段階的に拡大し、最終的に国民皆保険にする。必要に応じて政府補助を行う。
・企業、個人、政府のいずれかを通じて国民皆保険を実現し、保険のない人は罰せられる。
・保険会社はすでに病気にかかっている人、よく病気になる人が被保険者になることを拒んではならない。
・どのような保険でも選べるような“保険交換”ができるようにする。
■相違点:
・下院は企業に保険カバーを強制する。上院は強制しない。
・下院は年収50万ドル以上の人に課税して制度改革を支援する。上院も課税、手数料を課すが、保守派から“増税”のレッテルを張られないような内容にする。
・下院法案は10年間に1兆2000億ドル、上院法案は同9000億ドルかかる。