(1)慎重シナリオ
2015~2023年度の実質成長率が1.1~1.2%、2020年度の名目GDPが571.9兆円
(2)成長戦略シナリオ
2015~2023年度の実質成長率が2.1~2.4%、2020年度の名目GDPが661.2兆円
2010年において設定された目的は、「国・地方の基礎的財政収支(PB:プライマリーバランス)赤字の対GDP比を、2015年度までに(2010年度の水準であるマイナス6.4%に対し)半減し、2020年度までに黒字化する」というものでした。
試算の結論は、2020年度におけるプライマリーバランスが次のようになるというものでした。
このように、成長率の見通しが異なれば、結果はまったく違ってしまうのです。1%と2%の違いだけで、このように大きな差が生じるのです。
高成長も財政収支見通しも実現できず
では、実際にはどうなったでしょうか?
政府の「2020年度経済見通し」によると、名目GDPは570.2兆円となっています。
したがって、2010年に「成長戦略シナリオ」で描かれた将来像は、実現できなかったわけです。
2020年度経済見通しに示されている名目GDPの値は、成長戦略シナリオが予測した値の86%でしかありません。
しかも、前回記事「日本がこの先もずっと低成長しか望めない理由」(2020年2月2日配信)で述べたように、1.4%の見通しは過大であろうと考えられます。IMF(国際通貨基金)の見通しによれば、565.9兆円です。
では、財政収支はどうなったでしょうか?
内閣府は、2020年1月17日の経済財政諮問会議で、財政収支試算を示しました(「中長期の経済財政に関する試算」、2020年1月17日)。
それによると、2020年度の基礎的財政収支は 15.7兆円の赤字で、対GDP比はマイナス2.7%となっています(図表1参照)。
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