武漢からのチャーター便「8万円負担」は妥当か 邦人の帰国は政府からの強制措置ではない

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もう1つの論点は片道で約8万円という運賃水準が妥当かどうかだ。格安航空会社(LCC)を使えば片道1万円程度で中国から日本へ来るのは可能だが、基準となるのはANAやJAL(日本航空)などのフルサービス航空会社のエコノミークラス。早めに購入したり、往復で便を押さえられたりすればお得に購入することもできるが、搭乗直前の購入ならば運賃は割高になる。

羽田で使われているANAのサテライトゲート(筆者撮影)

今回、チャーター便の運航を受託したANAは、成田~武漢線の定期便を2016年4月から就航しており(定期便は成田発。1月23日より、武漢空港への交通アクセスが不通の為に欠航中)、その運賃を実際に見てみよう。

筆者がANAのホームページで5月搭乗分の武漢から成田への定期便における片道運賃を確認すると、燃油サーチャージや空港税などの諸経費を含めた支払額で、7日前までに購入が必要な運賃タイプは片道4万4840円、出発直前でも購入可能な運賃タイプだと片道8万6640円で販売されていた。

今回のケースでは直前での片道利用ということで、外務省は8万6640円という運賃を基準として8万円というチャーター便利用者からの徴収額を決めたと考えられる。8万円という金額は決して法外ではない。

感染拡大阻止のための費用は政府負担が妥当

一方で、日本帰国後の診療や他の人に接触させないためのホテル滞在などの費用負担は、感染拡大を阻止し、日本人の健康を守る意味で日本政府が全額費用負担するのが筋となるだろう。

日本以外の各国も、自国民を運ぶためのチャーター便は原則として利用者が一定の額を払う方式が取られている。チャーター便における税金投入に関する議論が繰り広げられているが、チャーター便利用者から運賃相当分の費用を徴収したうえで、感染拡大を防ぐ意味で日本国内では、医療体制や外部と接触させないためのホテル滞在などに税金を投入するのが望ましい。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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