JR赤字路線、「存廃論議」は今こそ始めるべきだ 災害で運休してから議論をしても遅すぎる
各社は、ローカル線の将来について、地元と協議を進めようとした。
JR東日本は2008年の経営ビジョンで「鉄道として維持することが極めて困難な路線・区間については、当社グループを事業主体とする鉄道以外の輸送モードの導入も含め、全体としてのサービス水準の維持・向上をめざす」と言及した。遠回しな言い方だが、一部路線のバス転換を視野に検討するということだ。
JR西日本は2010年の中期計画で「ご利用状況にあった最適な輸送モードへの転換に対する理解も深めていただくよう、地域との対話に努めてまいります」と踏み込んでいる。佐々木隆之社長(当時)は、大糸線などについて「それほど豊富な輸送量はなく経営的に苦しい。地域交通のあり方を地元と議論したい」とバス転換や本数削減を含めて地元と協議したい考えを示した。
だが、指針で示された「地域の関係者に理解を得る」のは容易ではない。
JR九州は2016年に上場してJR会社法の対象外となったが、新幹線以外の鉄道事業については苦しい状況が続いている。
青柳俊彦社長は2014年に「どの路線を廃止の対象にするかを検討していきます」と発言し、地元紙のインタビューでは指宿枕崎線が対象となる可能性を示唆した。この発言は九州内で問題視され、2015年の参院国土交通委員会で「指宿枕崎線を含め、廃止を検討している路線はありません」と釈明せざるをえなくなった。2018年に一部路線で減便した時も批判が集中し、災害で不通となった日田彦山線の将来についても協議できる状況ではない。
自治体が協議をしたくない理由
自治体はJRとの将来についての話し合いを拒絶する。正式な協議会がなければ、JRが廃止について「十分に説明」することはできない。地元が「理解」しなければ、廃線とはならずに問題は先送りされる。JRも地域との協議を避けた。「公共交通機関としての自覚が足りない」と批判されるのは気持ちよいものではない。
かくして、法改正から20年、JRローカル線の将来について議論は進まず放置されてきた。
自治体がJRローカル線に冷淡なのは、鉄道維持に税金投じる財政的な余裕がないからだ。90年代半ばから地方税収が落ち込む一方、社会保障費の増加が顕著である。
地方では鉄道を利用する住民が極端に減っている。有権者と議員の関心は低く、税金投入に理解を得られない。通学定期客すらいなくなり、公共交通機関として残す意味を失った区間もある。将来の人口減も不安材料だ。例えば日本最北端の稚内市は人口3.3万人だが、独自推計だと2060年で1.2万人に激減するという。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら