JR赤字路線、「存廃論議」は今こそ始めるべきだ 災害で運休してから議論をしても遅すぎる
JR北海道は5月に札沼線の一部を廃止する。JR四国牟岐線阿波海南―海部間は、今夏、阿佐海岸鉄道に編入される。徳島県が同社にマイクロバス改造の鉄道・道路両用車両DMVを走らせ観光鉄道化する計画にあわせての処置である。
JR北海道日高線鵡川―様似間は3月までにバス転換で最終合意が取り交わされる。JR東日本只見線会津川口~只見間も長期不通となっているが、福島県などが鉄道施設と土地を保有する「上下分離方式」での存続が決まっており、今年から2021年度の運転再開に向けて複数のプロジェクトがスタートする。
また、JR北海道は留萌線や宗谷線など10線区1058km、JR九州は日田彦山線添田―夜明間29kmについて、地元道県や市町村と今後について話し合いたいと申し入れしているが、協議は進捗していない。
鉄道事業者が、ローカル線の存廃の物差しに使う輸送密度という数値がある。1日1kmあたりの平均輸送通過人員のことで、国鉄は、1983年~1990年に輸送密度4000人未満の路線のうち83線区3157kmを廃線にした。
釧網線など一部の路線は、基準以下でも除外対象となってJRに継承されたが、民営化から30年以上経ち、厳しい状況に追い込まれている。通学生が少子化で半減したうえに、20~70代の住民の多くはクルマを運転できるので、鉄道を利用しなくても日常生活で困ることはない。
「輸送密度500人未満」が1つの基準となる。JR北海道によると、輸送密度500人未満とは鉄道輸送に直接必要な経費(燃料費や乗務員経費など)すら賄えないレベルだという。大量輸送の必要がない、公共交通機関としての鉄道の役割を終えた路線ともいえる。
この数字を下回るのは、JR北海道だと宗谷線名寄―稚内間など965km、JR東日本は米坂線など22線区672km、JR西日本は木次線など13線区575km、JR四国は予土線など3線区129km、JR九州は吉都線など7線区339km、あわせて2680kmだ(数字は2018年度で災害運休区間は除く。JR東海は非公表)。JR北海道は、このうち輸送密度200人未満の区間5線区312kmについて関係自治体にバス転換を提案している。
JRローカル線の廃止には「地域の関係者の理解」が必要
鉄道事業者が路線を廃止する要件は2000年の鉄道事業法改正で緩和され、廃線予定日の1年前に届出すれば受理されるようになった。国は関係する自治体等から意見を聴取するが、地元の同意がなくても届出1年後には廃線となる。これで私鉄の不採算路線の廃止が進み、とくに2001年4月からの7年間で25路線574.1kmが廃線となった。
ただ、国交省は、2001年12月の指針で、JR東日本・西日本・東海が営業線を廃止する際、関係自治体などに輸送需要の変化などを「十分に説明」したうえで、「地域の関係者に理解を得る」ことを求めた。3社がJR会社法の適用対象から除外されたので、安易にローカル線を廃止しないようハードルを上げた形になる。
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