叱れない上司は部下にどう注意すればいいのか 3つの心がけをすれば、部下は育成できる
④ 「相手の成長」よりも「自分の怒りをぶつけたいだけ」になっている
いざ叱るとなった際、自分の心に目を向けると、「怒り」が湧いていませんか? 部下の行動に対して「どうしてそんなことをするんだ?」とか、「何度言ったらできるようになるんだ?」とイラつき、怒りが湧いているとしたら要注意です。
この場合の怒りというのは、「自分の思いどおりにしたい」という感情ではないでしょうか。怒りが先に立つと、部下は、自分の成長を願って注意してくれているとは思いません。実際、怒りをぶつけられた部下は、行動を直そうとする前に、自分を守ろうとします。「言い訳」をするのは序の口で、だんだんと無口になり、最後には聞き流してやり過ごそうとし始めます。
何度叱っても無反応だったり、手応えが感じられないとしたら、部下にスルーされている可能性が高いです。怒りに頼らない叱り方をする必要があります。
このように「よくない叱り方」は、どれもついやってしまうものばかりではないでしょうか。注意・喚起できないのも問題ですが、叱る方法がよくないのも問題です。
では実際に、どのようにしたらいいのかを見ていきましょう。
叱らなくて済む方法~3つのIアプローチ~
叱れない人がうまく部下に注意・喚起できるようになる、具体的なアプローチがあります。
それはズバリ、「叱らなくても済む方法」を身に付けることです。
叱れない人が無理に叱ろうとしても、どうしても心理的な抵抗感が出てしまい、うまく行きません。そこで、「叱らなくても済む方法」=叱る側が「心理的な抵抗」を感じずに済む方法を身に付けることは、大変有効です。そしてこの方法は、「よくない叱り方」を回避するのにも役立ちます。
具体的に見てみましょう。
① 1つ目のI:Iメッセージで気持ちを伝える
② 2つ目のI:インフルーエンス(影響)を伝える
③ 3つ目のI:インプルーブ(改善行動)を決める
① 1つ目のI:Iメッセージで気持ちを伝える
Iメッセージとは、(私は)で始まるメッセージのことです。相手の気持ちではなく、自分の気持ちにフォーカスすると、相手は否定しにくくなります。遅刻をした人に「あなたは責任感がない」と指摘した場合、「いや、私は責任感はあります」と否定できますが、「(私は)遅刻したことを残念に思っている」という自分の気持ちは「いや、あなたは残念には思っていないはずだ」とは否定しにくいでしょう。
遅刻をしたことについて自分の気持ちを述べることは、「叱る」というニュアンスが薄れ、叱れない上司はかなり伝えやすいはずです。相手のよくない行動を指摘するという心理的抵抗を極端に減らすことができます。また、言われたほうも、上司の気持ちを述べられただけなので、反発する要素が大幅に減ります。