期せずして「水の専門家」になった男の仕事観 あちこちを回っているうちに問題が見えてきた

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――どういう場面で水問題の発信の効果を感じますか?

今年書いた中ではニュース個人で「小泉環境相がステーキを食べたことの何が問題か」(9月24日掲載)という記事が最も多く読まれました。政治家や省庁の方も「あの記事よかった」「やっぱり考えなきゃいけないよね」と直接声をかけてくれる。国の政策決定をする人や発言力のある人が読んで政策が変わっていくのはとても良いことだと思っています。

――市民からの反応を感じることもあるのでしょうか?

8月14日に「オリンピック水泳会場への汚水流入をどう防ぐか」という記事を書きました。僕は他人任せにして誰々が悪いということがあまり好きじゃないので、この問題について自分たちができることという観点で書きました。オリンピックの水泳会場をきれいにするのだったら都民だけではなくて埼玉、神奈川の人たちも油を出さないことが大事です、という内容です。

けっこう反響が大きくて、記事を読んだ人が「自分たちも気をつけなきゃ」「油をあれほど流しちゃってるとは思わなかった」と言ってくれる。やっぱり問題はみんなで取り組まないと駄目な部分はあるので、そういうところに貢献できるのはとてもうれしいです。

自治体にはびこる「AKB」をなくしたい

――水問題に取り組んでいてどんな課題を感じますか?

人手が足りないことです。地方は特に人と技術がどんどん失われています。自治体の足腰がすごく弱って課題解決能力もモチベーションも低くなってしまっている気がします。あきらめる、考えない、場当たりの(頭文字をとった)AKBの状態になってしまっています。そういう風潮を社会が作ったら、そのとおりになってしまった。

日々の課題に追われて、将来的なビジョンという発想がないんですよね。毎日の課題に陥って前に進めなくなる、それで仕事が面白くなくなるから辞める人もいる。多少乱暴でも「未来をこうするんだ」というのを見つけて、それをどう達成するかを考えていくのが必要だと思いますね。

――世代によって水問題への取り組みに違いがあるのでしょうか。

若い世代は水問題に対してすごくまじめですね。上の世代がみてる若い世代の像と全然違うと僕は思っています。これからどう生きていこうかということを考えて本当の意味で持続可能みたいなことを考えている人もいます。逆に上の世代は自分は死んでしまうからいいやというのが根底にあると思うので持続可能に関して口だけな部分がありますね。だから若い世代に任せた方が良いなとも思います。

――今後どんな活動をしていきたいですか?

何かあったときに、「いかに安全な水を確保するか」、「いかに(豪雨などの)水から安全を確保して生きるか」ということを持続可能性をかけてみなさんが「水から考え」「自ら考えて行動する」ような世の中が僕の目標ですね。そのための教育機関みたいなものが作れればいいし、水の恵みと水の脅威みたいなとこの情報発信をしていきたいですね。

子供向けだけでなく、自治体や企業をうまくつなげるような取り組みをしていきたいと思っています。50年後の世の中がよくなるように、街づくりとそれに関係する水みたいなことをみんなで考えていけたら良いですね。

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