JR東海・西日本「初の合同訓練」なぜ実施された? 阪神・淡路大震災の日に新大阪付近で実施

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今回の訓練場所として新神戸―新大阪間が選ばれた理由は、東海道・山陽新幹線は新大阪駅を境に担当会社が切り替わるから。正確には新大阪駅はJR東海の管轄で、博多方面に少し進んだあたりからJR西日本の管轄となる。

この会社境界という点がみそだ。会社境界付近で異常が発生したら、「JR東海だ」、「JR西日本だ」と1社に任せるのではなく、合同で迅速な避難誘導にあたるのが正解だ。

今回の訓練とは直接関係はないが、2017年12月11日に起きた「のぞみ34号」の台車亀裂トラブルでは、山陽新幹線区間でJR西日本の車両保守担当社員が異常を認めながら、列車の走行が続けられた。

台車亀裂の発見までに時間がかかった背景には、当事者間の「思い込み」があった。

東京の指令員は、本当に危険な状態であれば列車に乗り合わせた車両保守担当社員が「運行に支障がある」と伝えてくると思っていた。一方で車両保守担当社員は、指令員が車両の床下点検を実施するかどうかの判断を行うと思っていた。指令員と車両保守担当社員はお互いに、相手が列車の運行継続の判断をすると思い込んでいたのだ。

あらゆる可能性の想定を

このようなケースはつねに起きる。会社の境界付近で異常事態が起きると、JR東海とJR西日本の2社が当事者となる。その意味では、両社の社員が職種や通常の持ち場を超えて連携して、適切な避難誘導を行う合同訓練は不可欠なものであった。むしろ、JR発足から30年以上経過しているのに、なぜ今まで合同訓練が行われてこなかったのかが不思議なくらいだ。

ちょうど25年前のこの日、阪神・淡路大震災が発生し新幹線も大きな被害を受けた。JR西日本の松岡俊宏・新幹線鉄道事業本部副本部長は、「1月17日を目指していたわけではなく、日程を調整した結果、この日の実施となった」としたうえで、「地震の安全対策をしっかりと考えなくてはいけない日に実施するのだから、今回の訓練をより有意義なものにしなくてはならない」と話した。

大地震はいつかどこかで必ず起きる。その被害を最小限に抑えるためにも、ほかのエリアの会社境界も含めて、あらゆる可能性を想定した訓練を行っていくことが必要だ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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