乗務するのは誰だ? JRが挑む「自動運転」の成否 ボタン押せば動き出すが、万一の際は…
「目指すのは無人運転ではありません。ドライバーレス運転です」――。
JR九州の担当者が、報道陣に何度も念押しした。官公庁や多くの企業の仕事納めにあたる2019年12月27日の深夜から28日未明にかけて香椎線の香椎―西戸崎間で行われた自動列車運転装置(ATO)による走行試験の模様を、JR九州が報道陣に公開した。
自動運転が実現すれば理屈の上では運転士は必要ないようにも思えるが、無人運転ではなく、運転士に代わる係員を乗車させて運行するのがJR九州の目標だという。
今回の走行試験に先立つこと約1年前、2018年12月29日の終電後にJR東日本も山手線でドライバーレス運転に向けた走行試験を始めた。JRで続々と始まったドライバーレス運転の取り組みの背景にはどんな事情が、そしてどんな課題があるのだろうか。
自動運転の仕組みは?
鉄道における自動運転は、ATOを使った列車の加速、減速、定位置停止といった自動運転機能と、自動列車制御装置(ATC)と呼ばれる、列車衝突や速度超過を防ぐ保安装置を組み合わせることで実現する。さらに全駅ホームドア設置、踏切のない全線高架化など、列車が安全に走行する環境が整えば、無人運転が可能となる。このシステムを使ってゆりかもめやポートライナー(神戸新交通)は無人運転を実施している。
一方、都営地下鉄大江戸線やつくばエクスプレス(TX)、東京メトロ南北線、副都心線などはATOとATCの導入を前提に建設されたが、運転士が乗車して列車の出発や緊急停止などの操作を行っている。これらの路線は無人運転が狙いなのではなく、自動運転システムの導入で運転業務の負担が軽くなる分、運転士にはドア開閉など本来車掌がやるべき業務をやってもらう、つまりワンマン運転化が狙いの1つだ。東京メトロ丸ノ内線もATC、ATOを順次導入し、2009年からワンマン運転に切り替えた。
東京メトロは将来のドライバーレス運転について「まだ勉強中で、経営計画に織り込むような段階ではない」(広報担当)。TXを運営する首都圏新都市交通も「現状では運転士の乗務が不可欠」としているが、JR九州やJR東日本の走行試験の状況を注視しているのは間違いない。
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