仕事で「結果を残した人」はなぜ臆病になるのか 大切なのは「かつて何ができたか」ではない

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それは野本さんが現在の会社を経て、職業人としての経験をいくばくか積んだ、ということでしょう。その中で、一度は営業成績トップという成功体験をしてしまったがゆえに、転職して違うところに行って失敗をしたくない、という気持ちを強く持ってしまっているのだと思います。

つまり「成功のジレンマ」とでも言いましょうか、ようやく自分の中に築きつつある「仕事ができる自分」という自信を失いたくない。そんな状況であるがゆえに、新しいチャレンジをすることに躊躇してしまっているのでしょう。

そのうえで断言できますが、今チャレンジすることを諦めてしまってはこの先職業人としての成長はあまり見込めません。結果が成功であろうと失敗であろうと、若い頃にチャレンジをした回数、つまりどれだけ自分を能力的に、仕事的にストレッチできたかがその後の勝負を決めると言っても過言ではありません。

現在野本さんは、そのストレッチすることに躊躇してしまっている状況です。「ストレッチなくして成長なし」ですから、それは由々しき状況です。「仕事ができる自分」は永遠ではありません。つねにアップデートが必要なのです。

現時点においては野本さんにとっては営業成績でトップに立ったという事実は大きな功績であり、経験でしょう。ただし、長い目で見るとその成功体験もすぐに「過去の話」となってしまうのです。

挑戦や行動は、将来の自分に対する投資

人は誰でも仕事をするうえでは「今現在何ができますか?」でもって判断されるのです。「かつて何ができましたか?」ではないのです。だからこそ、現在進行形で成長していることが大切ですし、つねに自分自身の限界にチャレンジして、どんどん仕事面で自分をストレッチしていくことが大切なのです。

挑戦や行動というのは将来の自分に対する投資なのです。もちろんここで言う挑戦やストレッチとはイコール転職ではありません。

現在いる会社において、自分自身がより成長できる仕事に従事できるのであれば、それもストレッチに入ります。

しかしながら野本さんは、すでにそれなりにご自身がやりたいことが明確なわけであり、現在の会社ではそれはできないという判断なのでしょうから、この場合は挑戦とは転職を意味するのかもしれません。

いずれにせよ、自分自身をより成長させる場所はどこなのか? そういった視点でもって次のチャレンジ場所を決めればいいでしょう。

もちろん不安はつきものでしょうが、キャリア上の不安は経験のなさからくるケースが大半です。経験とはチャレンジした実績のことであり、チャレンジした幅のことです。

自分の中で経験という名の引き出しが増えれば増えるほど、成長できるのです。

不安だから現状を維持する。これでは成長は望めませんし、それでは不安がこの先なくなることはないでしょう。

将来の不安を最小化するためにも、今現在を必死に生きる必要があるのです。仕事ができる人もできない人も、人はすべて過去の行動の積み重ねであり、結果でしかありません。

「今どう生きるか」「次どう行動するか」それが将来を左右するのです。野本さんが現在という短期的視点での不安感よりも、長期的な視点での成長を目指して新たな分野においてご自身をストレッチされるであろうことを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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