特捜の看板には無理がある--『検察の正義』を書いた郷原信郎氏(弁護士、名城大学教授)に聞く

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--ライブドアは一罰百戒?

あの事件は法令違反になるかどうか微妙だが、六本木ヒルズに係官が突入する華々しい強制捜査で始まった。そのときに世の中の多くの人はどうとらえたか。ライブドアは表面的にはまともに見えるが、裏でとんでもないことをやっている会社と見たのではないか。だから、翌日の東証がシステムダウンを起こすほどの大混乱に陥った。

だけどフタを開けてみたら、焦点は52億円の会計処理上の問題だった。一罰の選び方が果たして適切であったかどうか。それによって経済社会全体に大きな影響を生じさせてしまった。

--「長崎の奇跡」といわれた地検次席検事時代の自民党長崎県連違法献金事件での成果は、検察全体へ波及していない?

その事件ではいままでのやり方とまったく違う捜査手法、組織づくり、目標設定で取り組んだ。その結果、本当の意味でのコンプライアンス、社会の要請に応えることができた。だが、6年たって旧来に戻っている。残念ながら、「長崎の奇跡」は文字どおり「奇跡」になってしまった。

(聞き手:塚田紀史 撮影:吉澤菜穂/アフロ =週刊東洋経済)

ごうはら・のぶお
1955年島根県松江市生まれ。東京大学理学部卒。東京地検特捜部、長崎地検次席検事、法務省法務総合研究所総括研究官などを経て、2006年弁護士登録。08年郷原総合法律事務所開設。名城大学教授・コンプライアンス研究センター長、桐蔭横浜大学法科大学院客員教授、総務省顧問などを兼務。


ちくま新書 756円

  

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