「愛車の一時交換サービス」は日本で普及するか 物々交換式カーシェアに輸入車販売店も注目

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カローゼットのアプリ画面(記者撮影)

輸入車のレンタカーは1日数万円するため、カローゼットの会員になって1日4980円の清算金を支払うことで「割安なレンタカー」として利用する可能性も否定できない。ボルボディーラーからすれば、カローゼットの会員に試乗車を貸し出すだけで、新車の販売促進につながらないリスクもある。そうしたリスクが伴う以上、ボルボがこうした実験的施策を直営店で検証してみるというのは妥当な判断ともいえる。

カローゼット側もいわば「借りられやすい車」と「借りられにくい車」が生じることはある程度想定しているが、会員が持つ車の種類が豊富にあることや、車を大切に乗っている会員が集うことに価値を置き、良質なコミュニティーを作ることを優先する。

感度が高い20~30代の自動車ユーザー

とはいえ、まったく新しいビジネスモデルだけにどれだけの人が反応するかは未知数だ。内藤社長も記者発表の場では、会員数などの目標を示さなかった。ただ、カローゼットの自動車ユーザーを対象にした調査では、同社のサービスに関心を示した人は約3割いて、20~30代はこうしたサービスにも感度が高いという。同社としては当面、協業先である三菱地所や大和ハウス工業、パナソニックなどが街づくりに関わっている地域の住民向けに新サービスを周知していく計画だ。

カローゼットのサービスは日本の消費者に受け入れられるだろうか(記者撮影)

シェアリングエコノミーの拡大とともに、日本では都市部を中心に車に対する消費者の価値観が、「所有」から「利用」へとシフトしつつある。一方で、これまでは自動車を所有しているユーザーに対してその価値を高めるサービスはほとんどなかったともいえる。こうしたサービスがあれば、今は車を持っていなくても購入することを考える人も出てくるかもしれない。

カローゼットは金銭授受を伴わない個人間シェアリングとしてビジネスモデルの国際特許も出願中だ。シェアリングブームの中、所有にフォーカスした逆張り戦略は吉と出るか。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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