新幹線や駅のテロ対策、「探知犬」は役に立つ? 優れた嗅覚で危険物を特定、運用には難しさ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

1つは今回の危険物探知犬だ。犬の優れた嗅覚を応用し、券売機や改札機の周りなどで危険物の所持者を特定しようとする試みだ。

もう1つは、衣服の下に隠した刃物などを発見するボディスキャナーだ。改札機付近に設置し、人体と物質から自然放射されるテラヘルツ波の差異を感知して利用者を選別する。実験は今年2回実施し、2回目は模擬危険物を持ったエキストラの検知だけでなく、検査場所に誘導して2次検査を行う流れの確認も行った。

これらの対策の長所は、利用者の通行を大きく妨げないこと。これで「利用者を足止めしない」という大きなハードルは越えた。

爆発物などを嗅ぎ分けることができる危険物探知犬(撮影:尾形文繁)

国交省が次に注目したのは、利用者がこうしたテロ対策を受け入れるか否か、つまり「受容性」の問題だ。

そこで、探知犬はビーグルやラブラドール・レトリバーを採用した。「かわいい犬」を使うことで、大型犬が与える威圧感を排除するためだ。ボディスキャナーについても設置は特定の改札機とし、ほかの改札機からも通過できるようにして協力は任意とした。国交省は通行人にアンケートするなどして、慎重に受容性を見極める。

どんなテロを想定しているのか

それでも気になることがある。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて想定するのは、どんなテロリズムに対するものなのだろうか。

ボディスキャナーや探知犬は、利用者の足を止めずに検査をすることを優先したため、テロ行為の中でも一部にしか効力を発揮しない。

今年12月20日に開業105周年を迎える東京駅は、1921年と1930年の2回、テロリズムの現場となった。いずれも移動中の首相を狙ったもので、凶器はピストルと短刀だった。だが、欧州でのイスラム過激派などによる交通機関を狙った大規模テロのような事態が国内でも起きるのではないか、という利用者の不安を解消するためであれば、この程度では心細すぎる。

次ページ危険物を発見した際の対応は?
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事