新幹線や駅のテロ対策、「探知犬」は役に立つ? 優れた嗅覚で危険物を特定、運用には難しさ

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また、仮に探知犬が危険物を発見した場合、その所持者の取り扱いを民間企業に任せられるのか、という問題がある。

ボディスキャナーの実証実験の様子。女性警備員の役割は、ひざ下の白いアンテナでテラヘルツ波を受けた分析結果で選別した不審者を、改札内の警備員に伝えることだ(筆者撮影)

ボディスキャナーの場合は、さらに面倒だ。銃刀法で規定される刃渡り15cm以上の刃物は別として、店で買った新品の料理包丁やカッターナイフなどの所持について、どう取り扱うのか。荷物を開けさせて調べる権限、また危険物所持者を見逃した場合の責任を考えると、実際の運用は簡単ではないことがわかる。

そもそも、テロ対策は鉄道事業者に任せることなのか。前出の危機管理室長は外国通信社の「悠長ではないか」という問いに「まさに初めてなので丁寧に対応している」と回答。実際のテロ対策の実施時期や期間については明言を避けた。

鉄道事業者の手に負えるのか

この鉄道テロ対策の費用は鉄道事業者の負担であり、導入するか否かは自主判断に委ねられている。ただ、いざ始めれば終わりの時期は見えないので、企業としては慎重にならざるをえない。ちなみに2019年度の実証実験は東京メトロ霞ケ関駅と都営地下鉄新宿西口駅でそれぞれ4日間、JR東京駅で1日行われたが、運用と調査の費用は計1800万円だ。

一方で、今回の対策がテロ対策ではなく、2015年の東海道新幹線灯油焼身自殺や2018年の同車内殺傷事件のような「事件」の防止対応になればよいではないか、という考え方もある。ただ、テロは政治的主張が世界に伝わる場所で起きることが多いのに対し、事件は国内どこで起きるかわからない。対象となる駅の範囲をさらに広げる必要があるし、五輪が終わったら対策終了というわけにもいかなくなる。

また、テロ行為者が高度な専門性を持つことを想定するなら、その対策は鉄道事業者の手に負える話ではない。鉄道事業者は、駅構内の安全対策や痴漢防止などに専念し、テロ対策は鉄道警察や警察官の巡回を強化するなど、すみ分けるべきではないのか。

2020年のテロ対策とは何か。我々は議論がどのように進んでいるか知らされないまま列車を利用している。

中島 みなみ 記者

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なかじま みなみ / Minami Nakajima

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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