リニア静岡問題、JR東海の「挽回策」はなぜ失敗?

他地域では進む工事、「次の一手」はあるか

JR東海と静岡県の関係はこじれきっている。そもそも水問題に関するこれまでの経緯という「事実」についても、両者の認識がまったく違うのだ。

JR東海の認識では、水問題を含めた環境問題について県や利水団体、沿線市町と以前から対話を重ねており、2014年10月の認可取得後は県が取りまとめ役となって工事着手に向けた基本合意の文書案作りを進めていた。ところが、合意案がほぼまとまり最終段階に入った2017年10月になって、川勝知事が突然、「JR東海の態度は極めて傲慢だ」と、協定締結に反対を表明したという。

静岡県の川勝平太知事(撮影:今井康一)

これに対して、県側の認識では、工事認可前の段階から「トンネル湧水の全量を戻せ」と主張し続けているが、JR東海からは回答がなかった。そのため、トンネル湧水の全量を戻すよう何度もJR東海に要求している。

このように過去の経緯に関しても、両者の捉え方はまったく違う。

県はトンネル湧水の全量戻しを要求するが、JR東海は環境影響評価で論点になっているのは大井川における河川流量の確保だと考えてきた。そのためJR東海はトンネル工事によって発生する湧水の全量は戻せなくても、大井川の水量を維持できるだけの湧水は戻せると説明してきた。

だが、着工が遅れると2027年の開業が危うくなる。背に腹は変えられない。2018年10月、JR東海は県の主張を受け入れ、「原則としてトンネル湧水の全量を大井川に流す」と回答した。ようやく両者の間で意見が一致したかに見えた。

国交省も協議に加わったが…

ところが、一件落着とはならなかった。県が「全量を戻す方法」についてJR東海に対して詳細な説明を求めたのだ。

JR東海は、2019年9月に具体的な工法を提示したが、「静岡県内で工事中のトンネルが山梨、長野とつながるまでの間は静岡県の湧水が山梨、長野側に流出する可能性がある」として、県側はこの工法に反対。トンネル湧水を一滴たりとも県外には流させないというのが県の主張だ。

今年8月からは国交省が協議に加わった。しかし、川勝知事は、リニアを所管する鉄道局は環境問題の検討ができないとして、水管理・国土保全局、さらには環境省、農林水産省の協議参加を求めている。

赤羽一嘉国交相は11月22日の記者会見で川勝知事の発言を「ちょっといかがなものか」といさめたが、知事の剣幕に押されたのか、従来からの「国土交通省として必要な調整や協力を行っていく」という方針に加えて、「開業の遅れをJR東海が心配しているのであれば、まずは両者間で懸念をしっかりと議論してクリアしていただきたい」という発言が加わった。一歩引いた印象だ。

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