あの「謎の赤い路線バス」池袋でついに運行開始 街中をぐるぐる回る2ルートの「IKEBUS」
愛らしい顔と、小さな5つのタイヤが横に並ぶユニークな姿はどう見てもバスには見えない。「なんだこれ?」――。道行く人が思わず振り返る。一足先に貸切バスとして、11月1日から池袋駅周辺を運行していた東京都豊島区の電気自動車(EV)バス「IKEBUS(イケバス)」が、11月27日、池袋の主要スポットをつなぐ路線バスとしても運行を開始した。
当日は朝からあいにくの小雨模様だったが、豊島区の高野之夫区長はまったく気にする様子はない。運行開始に先立つセレモニーで、「イケバスは池袋の名物になる。全国から、いや全世界から注目されるのではないか」と、満面の笑顔で挨拶した。
朝8時半。この日も、池袋駅前を足早に歩くサラリーマンたちが、思わず足を止めて、不思議なバスをしげしげと眺めていた。この不思議なバスは、なぜ生まれたのだろうか。
乗って楽しい移動手段を
イケバスの誕生までには節目となった出来事がいくつかあるが、2014年、民間の有識者からなる日本創成会議が23区で唯一、豊島区を少子高齢化による「消滅可能性都市」に指定したことも、イケバス誕生のきっかけの一つといえるだろう。
1999年から豊島区長として街の発展や芸術の振興に力を尽くし、「世界レベルの住みよい街」を目指す高野氏にとって、豊島区が消滅可能性都市に指定されたことは晴天のへきれきだった。すぐに事態の打開に動き始め、LRT(軽量軌道交通)の導入も検討施策の一つとなった。「街に人を呼び込むために乗って楽しい“トラム”をつくりたい」。2016年には区の「まちづくりガイドライン」にLRTの整備が将来構想として記載された。
ただ、LRTを導入した場合には軌道敷設などに約70億円の事業費はかかると試算された。池袋という都心の一等地にどうやって車両基地の用地を確保するかという問題もある。また喫緊の課題として、2019年には豊島区で東アジア文化都市という国際的なイベントが開催され、2020年の東京五輪も控える。区内の主要施設や観光スポットをつなぐ来街者の移動手段が必要となり、建設に時間のかかるLRTを待つわけにはいかない。
「今できることをしよう」――。LRTより、まずは現実的な方法として、10台の電気バスを導入して運行することが決まった。
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